除夜・捧物

□救出劇は虹の果て
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その日。たまたま元就は市に頼まれ探し物をしていた。校舎の外れのすでに使われなくなった物置の中に、その探し物はあった。いざ取ろうと二人で中に入った時、もともと瓦礫の上に置いてあってバランスの悪かった物置は二人分の体重を受け、グラリと揺れ、盛大に倒れた。
その拍子に市と元就も倒れ、したたかに頭を打つ。扉は閉まり、二人の意識も閉じていく・・・。



「おっかしーなー・・・。」

一限が始まる前のホームルーム。いつものメンバーが揃う中、どうしてか元就の姿がない。(他のクラスのメンバーも、なぜかこの時間はここにいる。)

「元親殿、いかがなされた?」

「元就がまだ来てねぇんだよ。」

「また太陽でも浴びてんじゃねぇのか?それこそSunflowerみたいにな。」

「俺様さっき屋上にいたけど、いなかったよ?」

いつも誰よりも先に教室にいる彼がいないのは、珍しいを通り越していぶかしい。そこに――

「おっはよ〜〜!」

遅刻魔、慶次が入ってきた。

「なぁなぁ、さっき外にでっかいトラック来ててさ、虹のマークが付いてたんだけど、あれって何のトラックだろ?」

「虹のマークのトラック?どこかで見たような・・・。」

半兵衛は首をかしげている。

「失礼する!」

何と珍しいことか。ホームルームが始まる時だというのに、なんと長政が教室に入ってきた。

「市を見ていないか?」

「お市サン?見てないよ?逆に、毛利の旦那は見た?」

「いや、私は見ていない。」

そこに、さらにかすがが入ってきた。後ろに小太郎がいる。

「あっれぇ〜?かすがじゃん、めっずらしぃ〜。」

「小太郎が市と毛利が一緒にいるのを見たと言うから、来たんだ。」

「何ィ!?今二人はどこにいるのだ!?」

「それが・・・。小太郎は校舎の外れの物置の近くで見失ったと。」

どうも変な話だ。よりによって、市と元就とは。

「半兵衛、いるか?」

「秀吉、今行くよ。」

と、その時――

PiRiRi――

「あ?俺の携帯じゃねぇか・・・。元就だ。」

ざわっ、と視線が元親に集まる。特に長政の視線が痛い。

「もしもし?」

『元親か?』

「おう。お前、今何してるんだよ。」

『誘拐された。』

「・・・ユーカイ?」

何やら物騒な用語が飛び出した。

『今我がどこにいるか分からぬ。学校の物置から記憶がない。』

「なっ・・・!?」

「市、市はいるのか!?」

長政が食い付いた。

『浅井か。市もここにいる。』


「ねぇ、秀吉・・。」

元親と長政を視野に入れながら、半兵衛は聞いた。

「虹のマークのトラックって、何のトラックか分かる?」

「虹・・?ゴミ処理のトラックがそうではなかったか?」

その瞬間、サーっと気温が下がった気がした。嫌な予感が半兵衛の脳内で構築されていく。

「そういえば、某さっき大きなトラックが物置を運んでいたのを見ましたぞ。」

これが決定打となり、半兵衛の頭に明確な答えが浮かんだ。
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