BLEACH
□不安
1ページ/1ページ
※現パロです
3月20日、春休みに入った一護は都内のある一軒のマンションの前に立っていた。
そこは1年前に仕事のため上京した恋人の住んでいるマンションだった。
恋人は社会人のため春休みなどはないが、今日は土曜日だからきっと家にいるだろう。
事前に連絡しておけば絶対無駄足にはならないが、それではつまらない。
彼は自分よりいくつも年上で、だから驚いた顔など1度も見たことがない。
だから急に訪れて驚かせてやろうと、そう思ったのだ。
3階の一番端の部屋、そこに"京楽"と書かれてあるのを確認して、インターフォンを押した。
「はい」
扉は開いたのだが、出てきたのは彼ではなかった。
眼鏡をかけた、見知らぬ女性。
「どなたでしょうか?」
「あ…その…」
「七緒ちゃーん、どちら様?」
「っ…!」
「あっ…!」
気づいた時には走りだしていた。
走って走って走って。
目についた小さな公園に入ってベンチに座り込んだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その時京楽は小説の締め切りが近いということで担当の伊勢七緒の監視の下自宅に軟禁されていた。
半年くらい前に趣味で書いていた小説を、同僚に言われて軽い気持ちで小説大賞に応募したところ、見事審査員特別賞を受賞。
その時の小説は出版され、今書いているのは2冊目の著作ということになる。
締め切りまでは5ヵ月と期間は長かったが、サラリーマンとして普通に生活しながらの執筆は思ったように進まず、現在にいたる。
「ねぇ、七緒ちゃん〜、」
「無駄口を叩いている暇があるなら1文字でも書いて下さい」
「そんなこと言われてもさぁ、少しくらい休憩しても…」
「先生が普段は普通のサラリーマンでだからそれほど執筆の時間が取れないのは分かっています。
ですが!締め切りまでは5ヵ月もあったんですよ?なのに残り1週間をきってまだ3分の2しか進んでいない。
締め切りに間に合わせるためにもこの土日は書いて書いて書きまくってもらいます」
「はぁ…」
諦めてパソコンに向き直った時、インターフォンがなった。
「私が出ますので先生は書いていてください」
そのあとドアを開ける音がして七緒の声がしたが、相手の声は聞こえず、京楽は誰何した。
「七緒ちゃーん、どちら様?」
するとパタパタと走り去る音が聞こえて、すぐに七緒が戻ってきた。
「ん?どちら様だったの?」
「先生の声が聞こえた途端走っていってしまったので名前は聞いてないんですが、オレンジ色の髪の高校生くらいの男の子でした」
京楽はすぐにそれが誰だか分かった。
「一護!!」
名前を呼び飛び出しかけた京楽に七緒が呼びかけた。
「先生、原稿は!?」
「そんなの後!」
マンションを飛び出した京楽は、近所をあちこち走りまわって、ようやく公園のベンチに座り込んでいる一護を見つけた。
「…一護」
「っ、春水さん…」
顔を上げた一護は泣きそうな顔をしていて、京楽は思わず抱きしめていた。
「どうしたんだい?一護。そんな泣きそうな顔をして。それにさっき家に来てくれたでしょ?」
「あ……な、何だよ。さっきの女の人はいいのかよ?」
「ん?七緒ちゃんのこと?あの子がどうかした?」
「だから!彼女放ってきて良かったのかよ!?」
「彼女って……あぁ、なるほど」
「何だよ、分かったならさっさと行けよ」
「彼女はそういうんじゃないよ。地元では発売されてないのかな?半年くらい前、僕本出したんだよ。
彼女はただの担当。締め切りが近いから監視するために来てるの。それに、
僕の恋人は一護だけだよ」
そう言ってやれば、一護は安心したように息をついた。
「あれ?一護ってば僕が浮気するとでも思ってたのかな?」
「だ…って、1年も離れてたしやっぱ男より女の方がいいんじゃないかって…」
「時間も距離も性別も関係ない。僕が一護以外を選ぶなんて絶対にあり得ないよ」
だから安心して、と京楽は安心させるようにもう一度強く抱きしめ、よし!と声を出した。
「それじゃあ家に戻ろうか。ちゃっちゃと書きあげて明日は都内を回ろう」
「っあぁ!」
それから家に戻った京楽は今までの遅筆ぶりが嘘のように残りをあっという間に書きあげ、翌日は久しぶりに恋人とのデートを楽しんだのだった。
<fin.>
あとがき
遅すぎる春休みネタ(笑)
ちなみに思いついたのは始業式の途中っていう(この時点ですでに春休み終わってたっていう←
相手は最初はギンで書いてて話も全然別物だったんだけど、関西弁分からないし話も広がらなかったからいっそのこと全部変えちゃいました
全体の3分の1を半日で書きあげるのは無理だろとかは言っちゃいけない
(400字詰め原稿用紙3.5枚でおよそ2ページ、文庫本だとだいたい280ページくらいだから、490枚、その3分の1だから約163枚で65200字←