BLEACH
□背伸び
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「…―寒っ」
一護はそうつぶやいてマフラーに首を埋めた。
そしてまだ来ない待ち人を探してきょろきょろと顔を動かした。
(はぁー…。やっぱさすがにまだ来ねぇよな…。あー!!久しぶりに会えるからって浮かれすぎたか、俺!?)
がしがしと頭をかいてため息をつく。
(早く会いてぇよ…冬獅郎…)
一番最近会ったのは、1ヶ月も前。
冬獅郎は護廷十三隊の一隊長、そうそう現世に来られるわけでもなく、一護は一護で死神代行とはいえ自由に尸魂界に行けるわけではない。
そうなると自然会える時間は限られてくる。
今回ぐらいの空白はいつものことなのだが、会えるのならば早く会いたいと思うのが人間というもので、一護は待ち合わせの時間の1時間も前から立っていた。
おかげで体は冷えきっていて、もう一度ぶるりと震わせた時急に辺りがざわざわし始めた。
何だろうと思い目をやると、女の子たちが道の先を見てささやきあっている。
『ねぇ、あの人かっこよくない?』
『うんうん!すっごいかっこいいよねー!』
『彼女とかいるのかなぁ?』
『何?あんたアタックするつもり?』
『そ、そんなんじゃないよ!』
『外国人なのかな?』
『そうじゃない?だってあんなにきれいな銀髪日本人じゃまずないでしょー』
(銀髪!?…って冬獅郎…?でも…)
いつもなら多少振り返って見られるものの、ここまでキャーキャー言われるほどではなかったはずだ。
人違いかと思い、顔を下に向けた。
彼のものでないならば、今銀髪は見たくなかったから。
そうしている間に、視界に誰かのクツが入ってきた。
一瞬冬獅郎かと思ったが、彼ならうつむいている一護の視界には、全身ないし肩くらいまでは入ってくるだろう。
ともかく自分の前で立ち止まっているからには何か用があるのだろうと顔を上げて、一護は息を飲んだ。
背は自分よりも高いくらいで、さっき誰かが言っていたように綺麗な銀髪は短く切ってある。
そして、瞳はエメラルドのような翠色。
それはまるで、冬獅郎が大人になったような姿だった。
「あ、の…?」
じっと黙ったままこちらを見てくる男性にいたたまれなくなって一護は口を開いた。
すると男性はハアッと息をついて口を開いた。
「俺だ…一護」
「冬…獅郎…?」
男性の口から出てきた声は、聞き慣れた――まさに聞きたいと思っていた声だった。
「え…でもその姿…!?」
「……十二番隊の奴らに作ってもらったんだ」
「へ?…何で?」
「…………」
冬獅郎は黙ってふいっと顔を背けた。
よく見れば、若干顔が赤くなっているように見える。
「冬獅郎ー?」
「…………が……だよ」
「何?」
「…お前より、背が低いのが嫌だったんだよ!」
その言葉に一護はぽかんとした。
まさかそんな言葉がくるとは。
「わざわざクロツチの野郎に頭下げて作ってもらったんだ。悪いか!?」
「あ、いや、悪くはねぇけど…」
「何だよ」
「いや、その…何でわざわざ…って思ってさ」
「…いいだろ、別に。義骸は本来姿形にこだわらなくてもいいんだ。ただ霊体とあまりにも違いすぎると勝手が悪いから同じにしてるだけでな」
「へぇー、そうだったんだ」
「それに…」
そう言って冬獅郎は一護を抱き込んだ。
とたんに周囲からキャーッ!!と悲鳴が上がる。
「あ、え、冬獅朗!!?」
「でかくねぇとお前にこういうこともできねぇだろ」
耳元でささやかれた言葉に、一護の顔はさらに赤く染まったのだった。
<fin.>
あとがき
…あれ?最初思ってたのと全然違うものが出来上がっちゃったよ?←
最初はこんなに甘っぽくなる予定じゃなかったのになぁ…
……ま、別にいっか←
背伸びどころかおもくそ成長しちゃってますがお気になさらずに(オイ
あ、"クロツチ"は携帯はおろかパソコンでもでなかったのですorz