BLEACH
□月下の杯
1ページ/1ページ
コンコンコン
「白哉ー、入るぞー」
その声とともに、六番隊の執務室に入ってきたのは、一護だった。
「…兄か。どうした?」
少しだけ顔をあげて一護を見、また戻して言った。
「いや、…恋次は今いないのか?」
「恋次なら今は書類を届けさせている。…だからといって今日はせぬぞ?いつ戻って来るかも分からぬしな」
「んなっ!ち、ちげぇよ!そうじゃなくてさ。…白哉、今日仕事終わったら空いてるか?」
「……空いている」
少し考えた後で、白哉は答えた。
「そっか!よかった!じゃあ…7時にいつもの場所でいいか?」
「…ああ」
返事をして、そのまま帰っていこうとしている一護に声をかける。
「…ちょっと待て。まさかこのことを言うだけのためにわざわざ来たのか?」
すると、一護は慌てたように戻って来て、書類を数枚取り出した。
「わりっ、忘れてたわ。ほんとはこっちがメインだったんだ」
「まったく、仮にも隊長なのだから…」
「わりーわりー」
代わりに何枚か書類をもらうと、今度こそ本当に執務室を出て行った。
その際、「じゃ、忘れるなよ!」と釘を刺すのも忘れなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その日の7時を10分程すぎた頃、白哉は約束の場所に急いでいた。
ようやく着いたそこには、既に一護が待っていた。
「すまない。少し遅くなった」
「いや、大丈夫!この待ち時間もお前を待ってるって思ったら全然苦じゃないしさ!」
「…そうか」
「ああ!そんじゃ行こうぜ!」
「どこに」とは白哉は聞かなかった。
行く場所といえばどちらかの家で、今日は白哉の家にはルキアがいるので、必然的に一護の家になるだろう。
思ったとおり、一護が向かったのは自らの家だった。
鍵を開け一護が入ると、白哉も当然のように後をついていく。
そこまで慣れるほど、互いの家を行き来したのだろう。
白哉は一護の部屋に行き、少しして酒とつまみをもった一護が入ってきた。
一護が持ってきた酒を見て、白哉は不思議そうな顔をする。
「兄が酒を飲むのは珍しいな。普段はどんなに勧めても飲まないのに」
「今日は特別。さ、飲もうぜ?」
「今宵は月が綺麗だ。縁側で飲もう」
「ああ!」
2人は少しの間、黙って酒を飲みあった。
「―…一護」
「ん?」
「隊長就任1年、ご苦労だったな」
「お、覚えていてくれたのか!?」
「ああ。兄のことだからな。…兄は現世での記憶も持っているから大変だったであろう」
「ああ…まあ、な…。でも、夜一さんも浦原さんも――お前もいたからさ、何とかやってこれたよ」
「…そうか」
再び黙って酒を飲み、一護は白哉にもたれかかった。
「一護…?」
「あのさ、たまにこうやって酒を飲むのもいいもんだな」
「…そうだな」
寄り添う2人を、やわらかな月光が照らしていた―…。
<fin.>
あとがき
この話では、一護は現世から尸界に来ていて、零番隊の隊長になっていて、副隊長は夜一さんと浦原さんの2人ということで
この設定は、一応一護の尸界での設定ということで
ちなみに、尸界に来ているというのは、もう1回死んでるってことです←