BOOK1
□すき。
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人識
『すき。』
「おう。」
『すきなの。』
「知ってる。」
毎日繰り返される言葉が、いつしか雪のように降り積もって、あなたを埋めてしまえば良いのに。
恨めしげな目をして人識を見つめても、返してくれない。
人識は
私に
愛を返してはくれない。
電車の前。
雪がしとしとひらひらしんしんと降っていて、私の視界の邪魔をした。
『すき。』
「おう。」
『でもこれが最後。』
私は電車の閉まる瞬間に言った。
『すきだけど……これが最後。』
「ふ〜ん。」
いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいさみしいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい………
心が
張り裂けてしまいそう。
知ってる。
知ってる。
あなたは愛を返してはくれない。
でもすき。
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追い掛けてほしかったけど、
来てはくれないとしっていたから。
終電を選んだのよ?
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