小説(長編)
□ラスト・スマイル 第10話
1ページ/7ページ
―君に抱く、それぞれの想い……―
〜千歳side〜
俺が謙也を迎いに行った時、謙也は何か思い詰めた顔をしていた。
俺は不安になって、謙也を呼びかけた。
何度目かの呼びかけに謙也は反応して、そして、そこに表情があることにホッとしたんだ……。
でも、本当に謙也は昨日の事を覚えていなかったから…
俺はまた不安に駆られた…。
そして、思わずそれが言葉にでてしまったが、謙也には聞き取れていなかったらしく、またそれにホッとして、俺は謙也に学校の中に入ろうと誘った。
暫く、他愛のない話をしていて、謙也にぎこちなくとも表情が…笑顔があることに安心していた時だった…。
謙也が改まって俺を呼ぶものだから、俺はそれに優しく聞き返した。
改まってどうしたんだろうと思いながら…。
そうして、謙也から出てきた言葉は、昨日も聞いた財前と別れた≠ニいう事……。
俺は、一瞬にして昨日の謙也の状態を思い出し、そして財前への怒りが込み上げてきた……。
黙っている俺を伺うように、謙也は話を続け始めた……。
「……でな、その時…、光が言ってたんよ…。」
「……なんて?」
昨日、聞いたのは別れたということだけ……。
財前はこんな状態の謙也に対して、まだ何か言ったのか?
「あ、あんな……、っ光、蔵のことが好きに…、なった…んやって…。」
!!!??
初めは、謙也が何を言っているのか判らなかった……。
それでも、俺の思考はどんどん冷静になっていく……。
思い出すのはそう……先ほどいた屋上での白石と財前のやり取り………。
互いに呼び方が変わっていたりと、急に仲を良くした二人の光景………。
でも、そこに疑問が湧き上がる…。
.