小説(長編)
□ラスト・スマイル 第2話
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―警報がなる―
最近、ずっと静かに感じていた音が、光と別れた途端に俺の中で騒音に変わった。
俺は、別れを告げられた場所から動けない。
怖い、怖い、怖い。
俺の中で、何かが壊れた。そして、何かが生まれてくる。
――コレハ、ナニ?――
小さい頃からよく知っているような、それでも覚えのない暗闇。
俺は、光が浮気をしていたことは知っていた。
苦しくないわけでは、決してないけれど。それでも、光が俺の元に戻ってくるならば、
それは俺が1番なのだと安心していたからだ。だから、責めたりなんかはしなかった。
自分だけを見てほしいなんて、自分勝手な我侭だと思うから。
中学生の恋愛なんかで、相手を縛ることなんて出来ない。ましてや、俺と光は男同士≠セ。
いつか、終わりがくることなんてわかっていたことなんだ。
ぢゃあ、俺は別れを切り出された時に何を言った?
ずっとずっと、終わりがきた時はキレイに別れて、先輩後輩の関係に戻ろうと思っていただろう?
何故、別れを拒んだ?
そもそも、俺は相手の気持ちを考えないで自分の気持ちだけを優先するのは嫌いだ。
ましてや恋人同士ならば、自分ひとりの好き≠セという感情では成り立たない。
それを、相手に押し付けるのは、自分のエゴだ。光を困らせることはしてはいけない。
寧ろ、ここまで、俺と付き合ってくれた光に、今までありがとうと思うべきではないだろうか?
こんなにも人を愛したことはなかったから。
誰もが、心底好きだと思える人と付き合うことが出来るなんてことではないのだから。
俺たちは特殊なのだ。付き合えたことのほうが奇跡に近いのだから。
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