いただきもの

□ ここへ来る理由
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「ふあ〜あ…」


白衣を身に纏った先生…ではなく女子生徒、沙也加が誰もいない保健室で一人、大きく欠伸をかいた。

その欠伸は眠気ゆえか退屈ゆえかはわからない。多分両方だろう。


沙也加は自分の前にある机に背を向けると


「もうそろそろ…」


と時計に向かって呟いた。





ガララララ…



保健室に響き渡る扉が開かれた音。


その音を響かせたのは…







「よう、沙也加」





「来たのね……総悟」



栗色の髪のをした甘いマスクの風紀委員、
沖田総悟だった。







―授業まだ15分しか経ってないのに…





「今日もこんなとこで授業サボってるんだねィ」




よいしょとソファに座り込む沖田に沙也加は溜息をついた。








「それは総悟もでしょ。というか私の場合ここが教室だから」


「教室にしちゃあ、随分豪華だねィ。クーラーもついてるしベッドもついてるし」


「羨ましい?」


「全然。俺はあの煩く騒がしい教室の方が好きなんでねィ」


「じゃあなんでそんな大好きな教室を出て、ここに毎日毎日来るの?」


「別に俺の勝手だろィ。ここはサボり場として絶好の場所なんでさァ」


「まあ気持ちいいし、眠れるしその気持ちはわかるよ。だって私も好きだから」


「それに…………」





ここで沖田の言葉が詰まった。






「それに?」





突然言葉が詰まった沖田に沙也加は首を傾げる。






「………うるさい先公がいねえし」



「私はいるけどね」









クスリと笑う沙也加を見て、沖田もつられるように口元を和らげた。














―沙也加、俺がここに来るのはねィ










誰にも邪魔されずに沙也加と話せるからなんでィ―…
















そうしてまた彼は保健室の扉を開ける。







もう治ることのない






甘い病を彼女に診てもらうために……














ここに来る理由






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