指先でとける
□06
1ページ/1ページ
グリフィンドールのテーブルについてすぐに、ダンブルドア先生から変わった一言があって、その後瞬く間に何もなかったテーブルの上に沢山の料理が並んだ。そのどれもが重そうな料理で、さすが外国なんて思っていたら、すぐそばで声がした。
「隣、いいかしら?」
なんとなく声のした方を向けば、そこには綺麗な赤毛の女の子がいた。じっと見ていると、目の色が深い緑色だということに気付いた。
「隣、いい?」
再び口を開いた女の子はさっきから私を見ていて、そこでやっと気が付く。
「えっ?あ、わたし?」
すると女の子はにっこり笑って頷いた。
「ど、どうぞ…?」
私がそう言えば女の子は私の隣に座った。
「緊張してるの?」
「緊張、してますね。今までこういった経験なかったし、アジア系の人いないみたいだから。」
正直に外国人ばっかりで、と直接外国人に言うのはやめておいた。向こうからしたら私の方が外国人だしな。
それにしても可愛い女の子だなこの子は。将来は絶対美人になるだろう。
「きっとそのうち慣れるわ。あ、私リリー・エバンズっていうの。」
笑顔でそういった女の子に何か引っ掛かった。どっかで聞いた事がある気がするのだ。エバンズ、エバンズ、リリー・エバンズ、……リリー?まさか、リリー・ポッター?
「ミレイと同じ5年生よ。それにね、私とミレイ、ルームメートなの!」
まさか、ね。赤毛で緑色の目でリリーなんて名前の子、イギリスには沢山いるだろう、きっとそう。
「えっと、何か気に障ったかしら?」
その言葉に我に返って女の子を見れば、さっきまでの笑顔はなくなっていて、ごめんなさいと謝ってきた。
「違うよ!いや、あのっ、こんな可愛い子がルームメートなんて、びっくりしちゃって。こっちこそ、勘違いさせちゃってごめんね、リリーちゃん。」
すると女の子はまた笑顔になって話しだした。
「そんなことないわ。ミレイの方が素敵よ。それに、私のことはリリーって呼んで。ちゃん付けされるのは慣れなくて。」
少し照れたようにいう彼女はとても可愛かった。だけどこのまま可愛いといったら、へんに続きそうな気がしたから話をそらした。
「じゃあ、リリーって呼ばせてもらうね。私のことはもう知ってると思うけど、ミレイ・イチノセです。これからよろしくね。」
「こちらこそ、よろしく。グリフィンドールへようこそっ!」
そして、私とリリーは目の前の料理を食べながらいろんな話をした。
いろんなといっても、その内容は私の事で、なんでも夏休みにマクゴナガル先生からリリー宛に手紙が来たらしい。その手紙には新学期から5年生に編入生が来る事とその編入生と同室になる事が書いてあったそうな。
それで、編入生について聞いたら、もちろん女の子だし、日本人だと聞いてとても楽しみにしてくれていたらしい。
まさか私の事を楽しみにいた人がいるなんて思いもしなかったから、この話を聞いたときすごく嬉しかった。でも、それと同時に私はリリーに嘘を吐いているという事にちょっとだけ、罪悪感がした。
【少し、が溜まる始まり】
(2011/09/26)