小説

□雨
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垂れ込める雲から雫が静かに落ちはじめていた。
「雨だね…」
ティナ・タウリスは壁ガラスを濡らし始めた雨粒を見詰めながら小さく呟いた。
ティナは紅茶の入ったカップを手にすると口につけ琥珀色の芳醇な液体を流し込んだ。
(折角のデートなのに…)
ティナは向かい合って座っている最愛の恋人…セリーヌ・アイゼンベルクに視線を向けた。
輝く金髪に吸い込まれる様なアイスブルーの瞳を持つティナの恋人はティナの視線に気付くと優しい微笑みを浮かべた。
ティナはフニャフニャの笑顔でセリーヌに笑いかける…
「雨になってしまいましたね…ティナさん」
「そうだね…これからどうしようか?」
「そうですね…」
セリーヌは少し首を傾けて思案顔になるがやがてティナに向き直ると口を開く。
「ショッピングにしませんか?素敵なアクセサリーショップを見つけたんですよ…」
「うん…」
(本当はどこでもいいんだけどね…)
ティナは赤い顔でセリーヌ…大切な恋人をを見詰める。
貴女と二人だったらどこに行っても幸福だよセリーヌ…内心で呟きながらガラスに付いた雨粒を見詰める。
(雨だってセリーヌと一緒だったら全然嫌じゃないし…あたしって本当にセリーヌが好きなんだ…大好きなんだね…)
ティナが静かにセリーヌを見詰めているとセリーヌが口を開いた。
「変ですね…」
「フミァ!?な、何が…」
セリーヌの声に驚いてティナが問い返すとセリーヌは優しい微笑みを浮かべながらティナに話しかける。
「ティナさんと一緒だと雨の日でも、憂鬱にならないんですよ…これからの予定だってティナさんと一緒ならどんな所に行っても楽しいだろうなあ…って、考えてしまうんですよ。」
そう言いながららセリーヌに優しく微笑みかけられたティナは耳まで真っ赤になりながら俯いてしまう。
(あたしって、狡いよね…いつも、いつも、セリーヌに優しい言葉や大切な言葉をかけて貰っていつも幸福を貰ってて…大好きなセリーヌに沢山の優しさと幸福を貰ってばかりで…)
「……ありがとね、セリーヌ…あたしも一緒だよ…セリーヌと一緒にいれるだけで本当に幸福だよ…だからいつも沢山の幸福と優しさをあたしにくれてありがとね…」
ティナの言葉にセリーヌは幸福そうに微笑みながら頷いた。
「私こそありがとうございますティナさん…いつも私を優しく包み込んでいてくれて沢山の幸福で私を包んでいてくれて…」
「セリーヌは優し過ぎだよ…でも、大好きだよ…」
「私もですティナさん」
降りしきる雨の中ティナとセリーヌは互いの想いを噛み締めあいながら見詰め合っていた。


大切な貴女とならば憂鬱な雨でさえ幸福を感じさせてくれるから


雨 終了
 

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