宝物庫

□朔夜様
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麗しの生徒会長事、藤乃静留は、ソファに座りながら
読書の秋だけに、雑誌を読んでいた。
服も秋模様に変わっている。
何処かのお嬢様のようだ。
いや、お嬢様だが。
すると、扉を開くがちゃりという音がした。
反射的に見遣った静留の頬は、綻んでいた。
そして、ぱたぱたという足音が響き………リビングの扉が開いた。

「ただいま」

開口一番、穏やかにそう言ったのは
藤乃静留最愛の人、玖我なつきだった。
こちらも衣替えしており、厚手のパーカーを着ている。
しかし、オマケが付いていた。
ベージュに近い白色をした紙袋を片手に持っている。
ソレに気付いた静留は、何なのだろうと一瞥してから
なつきに 「お帰りやす」 と、柔らかい微笑みを浮かべて言った。
ぱさりと雑誌を閉じ、テーブルに置きながら。
その言葉に、なつきは穏やかに微笑んで 「あぁ」 と答える。
そして途端に出来る恋人同士の何とも言えない甘い空間。
見詰め合っていたりする。
そんな折、なつきは静留に歩み寄り、隣に腰掛けた。
がさっと、紙袋が音を立てる。
それに、改めて何なのだろうと思い、静留は訊いてみる事にした。
「なつき、ソレ、何なん?」
そう言って、可愛らしく小首を傾げて問う。
すると、途端になつきは嬉しそうに笑んだ。
と、同時に、紙袋に手を突っ込んで、物色を始める。
そして現れたのは、毛編みのマフラーだった。
しかも、薄紫の。
静留はソレを見て、きょとんとする。
そんな静留を他所に、なつきはマフラーを見詰め嬉しそうに恥ずかしそうに、はにかみながら語り出した。
「これな、その、一応私が作ったんだ。
勿論、初めてだし、不器用だから
どうしても出来ない所は舞衣にして貰ったんだが……」
その言葉に、静留は驚いた。
家庭的な事がてんでダメで出来ないなつきが
マフラーを編んだと言ったのだ。
その驚きは、なつきを知っているからこそ大きい。
すると、なつきはそんな静留にマフラーを掛けた。
え、と静留は驚く。
それに対して、なつきはにこっと笑った。
「ほら、この前寒くなって来たって言ってただろ?
だから作ってみたんだ。
市販でも良かったんだがそれだと本当の意味で暖かくなれないかと思って……」
照れたようにそう言って、なつきはどうだ? と問うた。
それに、静留はこくりと頷く。
今にも泣きそうな顔をして。
途端になつきは慌てる。
どうして泣くんだっ!? と。
しかし、それは一瞬の事だけだった。
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