静なつ部屋

□貴女の瞳に囚われて
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「なあ…静…留」
玖我なつきは恥ずかしげに呟いた。翡翠の瞳は恥ずかしそうに伏せられ、いつものクール・ビューティな様子は微塵も感じられない。
なつきは恥ずかしそうに自分の膝の上に座り込む恋人…藤乃静留を見詰める。
亜麻色の柔らかな長髪と綺麗な紅い瞳の持ち主はなつきの肩を抱きながら悪戯っぽい瞳でなつきを見詰める。
「どないしたん、なつき?」
「…わ、分かってるだろう?…ど、どうして…こんな体勢…っうん…」
なつきの抗議の声は静留の唇によって塞がれる。
「……っはぁ、し、しず…る…っやっ…っん」
(あ、頭がクラクラ…す…る)
なつきは恋人のとろけるような甘いキスに酔いしれてしまう。
静留は名残おしげに唇を離すと真紅の瞳でなつきを見詰める。
「勘忍してや、なつき…あんまりなつきがかいらしゅうて…我慢できへんかったんよ。」
「…ハア…ハア…し、しず…る…」
静留の声に喘ぐように呟くなつきは何とか続ける。
「ど、どうして…こんな…体勢を…しなきゃ…いけないんだ。」
「なつきのかいらしい顔よう見る為に決まっとるやないの」
「………っな」
(よっ、よくそんな恥ずかしい台詞を…)
なつきは静留を見詰める…真紅の瞳は優しく、それでいてどこか悪戯っぽくなつきを見詰める。
「お前…楽しんでるだろう…」
プイッと横を向き呟く。静留の瞳を見ているのが恥ずかしくなったからだ。
「…勘忍したってや、なつき…あんまりなつきがかいらしゅうて…」
「…っひぃあ…っあ、そ、そこは…」
静留に耳を舐められてなつきは思わずあられもない悲鳴をあげてしまう。
「なっ…機嫌直したってや…なっ…」
「…や、やめ…そ、そこ弱いの…っはぁ…し、知ってる…だろ…っあ」
静留の舌の動きに嬌声をあげてしまうなつき…静留は暫くなつきの反応を楽しんで漸くなつきの耳を開放する。
「……ハア、ハア…し、静留…」
「ほんまかいらしいなあ…なつき…」
静留は両手を合わせ顔の前で傾けながらなつきの顔を見詰める。
(意地悪な瞳…)
なつきは上気した表情で静留の瞳を見詰める。
貴女の瞳には様々な種類がある…本当に優しくて本当に幸福そうに私を見詰める瞳も今の少し意地悪な瞳も…
(みんな…私だけにくれる瞳…)
なつきは愛しげに静留を見詰める。
私は貴女の瞳に囚われてしまった…優しくて少しだけ意地悪な貴女の瞳に…
「幸福か…静留?」
なつきの問いに静留は弾けるように明るい微笑みで答える。
「うちは本当に幸福やで」
「………そうか」
なつきは目を伏せる。
貴女の幸福が私の幸福…だからその瞳で私を囚えていてほしい。
(優しくて…少し意地悪な貴女の瞳で…)
なつきは内心で呟きながら静留を見詰める。
二人の夜はまだ始まったばかりだった。

貴女の瞳に囚われて 終了

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