静なつ部屋

□決戦は創立記念祭
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ケーキ店「クリストローゼ」
ドアが勢いよく開かれたので「クリストローゼ」のウェイトレスのティナ・タウリスは驚いてドアの方に目をやる。
ドアに立っていたのは風華学園の制服に身を包んだ玖我なつきの姿があった。
艶やかな黒い長髪に煌めく翡翠の瞳を持つ凜とした雰囲気を持つ美少女は瞳に強い決意を宿しながら歩みよってくる。
「いらっしゃいなつきちゃん。珍しいね。今日は一人なの?」
ティナの言葉になつきはコクンと頷くといきなり頭を下げる。
「うにゃあ?っど、どうしたのなつきちゃん?」
「は、恥をしのんで…頼みに来た…セリーヌさんとティナさんに…き、聞いて欲しい事が…ある。」
なつきが耳まで真っ赤になって告げるのでティナは慌ててセリーヌを呼びに奥に走る。
「クリストローゼ」キッチン
「セリーヌ、ドアにCloseのカードかけといたよ。」
「…すまない…私の為に…」
ティナの言葉に頷く「クリストローゼ」のオーナーパティシエのセリーヌ・アイゼンベルクになつきは頭を下げて呟く。
セリーヌは微笑して頷くとさらりと呟く。
「静留さんの事ですか?」
「っな、な何でわ、分かったんだ。」
「いや、貴女があれだけテンパッて来たら大体想像はつきますよ。」
セリーヌの言葉になつきは真っ赤になって俯く。静留とは今年から風華大学に進学しているなつきの親友以上恋人未満な存在の女性である。
亜麻色の長髪に憂いが潜む真紅の瞳を持つ美しい女性である。静留は寮生活を営む傍ら一人暮らしをするなつきの身の回りの世話をしているのだ。
「静留の想いを跳ね退けた私に静留は今でも今まで通り接してくれている…」
なつきは俯いたまま話し始めた。セリーヌとティナは黙ってなつきの言葉を聞いている。
「だけど…あいつは…静留は絶対に無理をしている…自分の気持ちに枷をかけて…」
なつきを見てセリーヌは頷きながらなつきに声をかける。
「告白したいのですか?静留さんに…」
セリーヌの言葉になつきは一瞬身体を硬直させてやがて小さく頷く。
「憐れみや同情なんかじゃない…静留が…好き…なんだ…大…好き…なんだ…もう、あんなに…無理してる…静留を…見たく…ない。」
なつきは俯きながら呟く膝の上で白くなるほど握りしめた拳に涙の粒が落ちていた。
「だから…静留に…好きだと…伝えたくて…だけど…私はそんなこと…したこと…なくて」
鳴咽混じりに告げるなつきにセリーヌは声をかける。
「告白しようとしても、静留さんの顔を見るだけで、静留さんが大切すぎて言葉が出なくなるんですね?」
その言葉になつきは真っ赤になり涙混じりに頷く。
セリーヌはもらい泣きしてぐずついているティナに声をかけた。
「何とか協力してみませんかティナさん?」
「………うん、もちろんだよ。」
「…あ、ありがとう。」
なつきは深く深く頭を下げながら感謝の言葉を伝えていた。
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