翡翠の龍舞

□ガールズ・オブ・ザ・デッド…パンデミック…
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「……これならアイツも喜んでくれるだろうよ、礼を言うぜバカヤロー」
「ありがとうございます」
蒙獲の言葉を受けた陳宮は笑顔で応じたが、その最中に重なりあったパトカーや救急車のサイレン音が室内に響き、それを耳にした二人は視線を通りに面した嵌め込み式のガラスへと向けた。
二人が嵌め込み式ガラスから外の様子を確認し始めて暫くすると車体側面に警視庁と記されたパトカーが赤色灯を回転させながら姿を現し、続いて同じ様に赤色灯を回転させた救急車の車列が姿を現した。
車列は10台を超える救急車によって構成されており、各車が響かせるサイレン音は店内にまで響き渡り、客達は戸惑いの表情を浮かべながら前進を続ける車列を見詰めた。
先頭と最後尾にパトカーを配した救急車の車列は瞬く間に陳宮と蒙獲の前を通り過ぎて行き、蒙獲は遠ざかって行くサイレンの音に顔をしかめさせながら口を開いた。
「……ドデカイ事故でも起こったみたいだな」
「……ええ」
蒙獲の呟きを受けた陳宮は車列の進行方向に視線を向けながら相槌を打ち、二人はそれから暫く車列の進行方向に見詰めていた。

喫茶店「ジン・ドリンカーズ」

救急車の車列を目撃した陳宮と蒙獲はその後会計を済ませて店を後にし、同じ階の別フロアで営業している喫茶店「ジン・ドリンカーズ」で暫し寛ぐ事にした。
ウェイトレスに席へと案内された二人はアイスティーとアップルパイを注文し、それを受けたウェイトレスは笑顔で頷いた後に二人の前から歩み去っていった。
「悪かったな、付き合わせちまって、ここは奢らせてもらうぜ、バカヤロー」
「ありがとうございます」
蒙獲の言葉を受けた陳宮は穏やかな表情でそれに応じ、二人は注文した品が運ばれてくるまで何気無い雑談を交わした。
「……そう言えば、さっきのとんでもない数の救急車は一体何だったんだ?事故だとしたらかなり馬鹿デカイ事故だぜ」
「……そうですね、車列の前後にはパトカーも居ましたし、普通の事故とは違う様でした」
蒙獲がアップルパイにフォークを伸ばしながら発した呟きを受けた陳宮はそう言葉を返しながらストローでアイスティーを口に含み、程好い甘さと冷たさの琥珀色の液体で喉を潤した後にブレザーのポケットからスマートフォンを取り出しながら言葉を続けた。
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