黒翼の扉(短編小説)

□続・叶えてアゲル。
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「…はぁ…っ…もっとッ…セフィ…ッ…あああッ!」 

反らした白い喉をヒクつかせ、何度達したかも判らなくなるほど抱き合っても、まだ足りない、まだ満たされないと欲しがり。 

顔は涙に濡れ、互いに吐き出し交ざり合う情欲の証で全身を濡らし、淫らな姿を晒しながらも尚、お前は壮絶なまでに美しく。


求めるままに揺さ振られ、与えられるままに快楽に溺れ、幾度も極みに飲み込まれ、徐々に焦点の合わなくなってくる蒼紅の瞳。 

わけも分からず無意識に、その薄く開かれた唇から洩れるは俺の名ばかりで。 

「セフィ…ロス……セ…フィ…ッ…」

その妖艶な姿に俺は我を忘れ、獣のごとく己の欲望のままにお前を貪り尽くす。


もっと溺れればいい。 
もっと乱れればいい。 

俺だけを瞳に映し、俺だけの為に生きればいい。 

それが俺を生かすから。

お前だけが唯一、俺を支配できる存在なのだから。






それはジェネシスが意識を手放すまで続いた。 


「…ん。」

髪を優しく梳く、心地いい感覚に薄く瞼を開く。 

「あぁ、起こしてしまったな…。大丈夫か…?」

薄く微笑む顔を見て、まだ甘え足りないとばかりに、その胸に顔をすり寄せて。 

「ん…。大丈夫…。」

と一言。

一度素直になると、途端に甘えてくる姿がどうしようもなく愛しくて。

その柔らかい髪に何度もキスを降らせる。


「ジェネシス…今度二人でどこか旅行にでも行かないか…?」

突然の提案に驚き、ジェネシスが顔をあげた。

「さっき見てた雑誌はそういう雑誌だっただろう?」 

随分と分かりやすく顔に出ていたらしい。 

「でも、あまり気に入った場所が載ってなくて悩んでいただろう?」

と言われ、この男はエスパーだろうかと、一瞬本気で考えてしまった。


「近いうちに良い場所を見つけて、一緒に休みをとろう。…楽しみだな?」


そこまで言われた所で、セフィロスの口を手でふさいだ。

「俺が先に言おうとしてたのに…楽しみだなって。」

少しだけ拗ねたように言われ、自然と顔がほころぶ。 

ここまで幼子のような表情を見せてくるのは、本当にごく稀で。

普段の顔からは予想できない、このアンバランスさをセフィロスはひどく気に入っていた。

ふさいだ手を掴み、ペロリと舐めてやると、顔を真っ赤にする。 

「お前のそういう姿が俺を夢中にさせるんだ。」

「じゃあ、もっともっと夢中になればいい。」

ニヤリと笑う顔は、もう大人のそれに戻っていた。 本当に。
お前というやつは。

「これ以上?俺の命まで絞り取る気か…?」

からかうように言ってやれば。

「それも悪くないな。」

と艶然と微笑まれる。


そうだな。
それも悪くない。

まるで交尾が終わった後、喰い殺されてしまう雄蜘蛛のように。

お前に喰われ、お前の中で生きられるなら、それも悪くない。



「では。俺の命が尽きる前に、思い出づくりをしないとな?」

その言葉にクスクスと楽しそうに笑い声を上げる顔が余りにも無邪気で。

ほら、また表情が変わった、と内心呟く。



「なぁセフィロス、どうせなら静かな所がいい。…誰にも邪魔されずに、二人きりで過ごせる所…。」


そう言うと、また胸に甘えてくる。 


明日からお前のために、場所探しをしよう。 




こうして抱き合えるなら、俺は何でも叶えてやれる。




        おわり

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