黒翼の扉(短編小説)

□ご機嫌いかが?
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「まだ怒っているのか?」


「別に。」


プイとそっぽを向いたまま、こちらを見ようともしない。 

そんな怒った顔すら可愛いく思うが、いつまでもこの状態では話もできない。

それでなくとも、ジェネシスは一度ヘソを曲げると長い。 

放っておくと数日間、口もきかない時がある。


「今朝は悪かった。この埋め合わせは、必ずする。」

最近お互いに忙しく、顔を合わせる時間が少なくなっていた。

そんな中、珍しく休日が重なり、久しぶりに二人きりで過ごす予定だったのだが。

突然任務の予定が変更になり、セフィロスの休日が返上されてしまったのだ。


そんな事、セフィロスのせいではないと、頭ではわかっている。

わかっているけど。 


とてもとても、楽しみにしていたんだ。

悔しいから口には出さないけど。

それなのにセフィロスときたら。

「すまないが、急きょ休みが変更になった。」

とだけ告げると、さっさと任務に出てしまった。 

急ぎの任務だったのも、わかっているけど。 

もう少し、残念そうにしたっていいだろう? 

あんなにあっさり言われたんじゃ、楽しみにしていた自分がバカみたいだ。 

「別に楽しみにしていた訳ではないから、埋め合わせなんてしなくていい。」

強がりで言った言葉は、あまりにも大人げなくて。 

失敗したと思ったが。 

すでに手遅れ。 

何故かセフィロスの前では感情が抑えられない。

小さな事で怒ってみたり、我が儘を言って困らせてみたりしたくなる。

それは彼なりの甘えだと、セフィロスには全てお見通し。


今の拗ねた言葉でセフィロスの表情が緩んだのが、顔を見なくてもわかった。


「これでもお前のために、急いで終わらせてきたんだが?」

なんて言われてしまった。 

ジェネシスは引っ込みがつかなくなり、顔を背けたまま。

それを見たセフィロスが、紳士然とひざまずき、その手を取ってキスをして。 

「まだ今日という日は終わっていません。どうか、ご機嫌を直して頂けませんか?」

なんて。まるで舞台のセリフのような大袈裟な言い回しをされる。

途端に、どうでもよくなってしまった。
怒っている時間だってもったいなく感じて。 

「残りの時間で、今日一日分満足させてくれるのか?」 

と顔を向けると、自分だけが見る事のできる、柔らかい微笑みで、見つめられていた。 

この表情をされてしまうと弱い。 
全身の力が抜けてしまう。

「お望みのままに…。」

なんて言われて、抱き寄せられると。 

もう完敗。甘えたモード、スイッチON。 


セフィロスにとっては、怒ったり甘えたり、クルクル変わるこの表情がたまらなく愛しくて。 

どうやってご機嫌をとろうか、考える事すら楽しんでいた。 

そうやって、さんざん甘やかして可愛いがって。 
最後は泣くまで責め立てるのがお気に入り。

綺麗な顔して、かなりの鬼畜エロ魔神。


ジェネシスの髪を優しく撫でながら、今夜の事を考えてギラリと光る瞳。 


がんばれジェネシス
負けるなジェネシス!        


       おわり

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