白翼の扉(短編小説)

□ある日のザックス
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「なぁ〜、もうすぐアンジール帰ってくるんだけど、ここで待ってていい?」


1ST専用ラウンジでくつろぐ、セフィロスとジェネシスを訪ねたザックス。 


「なんだ子犬。主人の帰りが待ち遠しくて、じっとしていられないのか。」 


ニヤニヤとからかいながらも、二人共ダメとは言わず。

「そんなんじゃねぇもん…!」

と返せば。 

「“もん”って言った?」 
「ああ。“もん”って言ったな。」

「相当、拗ねてるな。」

「そうだな。ご機嫌ナナメだ。」


益々からかわれる。 

「…あんた達うるさいよ!」

ここで報告書を書いてしまおうと、がさがさと広げながら、反論する。 


この二人に、こんなに気やすく近づくのも、こんな口をきくのも、ザックスくらいなものだろう。



「プッ!」と吹き出しながら、二人共口を閉じた。 


アンジールが任務に出て一週間。長かった。 
今日やっと帰ってくる。 実際、待ちきれない気持ちで一杯。



一般ソルジャーのラウンジと違って、ここは静かだ。

セフィロスの雑誌を捲る音と、ザックスが報告書に記入するペンの音だけが、やけに響く気がして。 

パラ……パラ……。 

カリカリカリカリ…。 


チラリと目線を二人に向ければ。 

セフィロスの肩に、ジェネシスが背中を預ける格好で寄りかかっていた。 

気付けばスヤスヤと寝息をたてている。

その自然で、静かな空間。そこだけ違う時間が流れているようで。 

ザックスは思わず見入ってしまった。

「あんた達って、何か…、長年連れ添った熟年夫婦みたい。」 

と、トンチキな発言。

そのセリフに一瞬目を丸くしたセフィロスだが。 

「お前は面白い事を言うな…。」
と気を悪くした風も無く、静かに笑った。

そのままジェネシスに視線を移し微笑むセフィロス。

その何とも優しげな愛しげな、穏やかで柔らかな微笑みときたら…!


『うわーっ!うわーっ!どうしよう。セフィロスがあんなカオするんだ…!』


その見た事の無い表情に、動揺するザックス。 
思わず赤面して、顔を伏せてしまう。


胸の奥がくすぐったいような、きゅうっとなる感覚に、益々アンジールの帰りが待ち遠しくなって。 


何だか切なくなりながら、報告書の記入を再開した。 

でもやっぱり気になって、またチラリと見ると。


ジェネシスの髪を指ですくい、耳元にキスを落すセフィロス。

その感触に目を覚まし、指先で唇をなぞれば。 

それに答えるように軽いキスを何度も繰り返す。


いや、ちょっと二人共、俺がいるのにオープン過ぎるダロ?

「…。あんた達、少しは遠慮してくれよ〜!!」

いたたまれなくなり、思わす情けない声を出してしまった。


よくよく考えれば自分達も、この二人の前ではお構い無しにイチャイチャしているが、今はソレは棚の上。


「こんなに子犬が寂しがってるなんてな。」


「アンジールが帰ってきたら大変だな。」

またもやニヤニヤとからかわれて。


『あ〜もう、ヤだ。この二人…!』


脱力していると、“ガチャリ”と音を立ててドアが開き、待ち焦がれた人の姿が現れた。


声をかける間もなく、ザックスが飛び付く。 

ギュッときつく抱きついて、甘えるように胸に顔をすり寄せると。 

状況を把握できないアンジールは、すっかりキョトン顔で。

まあいいか、と、その可愛い姿を抱き締め返す。

頬を両手で挟み上を向かせて、ただいまのキス。 


そんなやり取りをジッと見ていた二人が、今日何度目かのニヤニヤ笑いで、声を揃えた。

「お前達、少しは遠慮してくれ…!」



ホント、その通りのバカップル二組。




        おわり

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