再会の扉(長編小説)

□願う青空、片翼の幻。
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 ああ、俺、 
    死ぬのかな…。 

 どうせ最期なら 
  

 目が痛いくらいに
   まぶしくて

 吸い込まれそうに
    綺麗な


    あの
 青空が見たかったな  






どんよりと昏い空の下、激しい戦闘の跡も生々しい荒野の小高い場所に、一人残されたザックス。


全身の激痛で意識が朦朧としてきて。


たくさんの色々な想いが、瞬きの間に走馬灯となって駆け巡る。


クラウドの奴うまく逃げたかな。 

『夢、誇り、俺の全部、お前にやる。』

そう言って、アンジールから受け継いだバスターソードを渡した。

それは、俺の代わりに戦えという意味ではなく。

願い。

どうか俺の分まで…歳を重ねて爺さんになるまで…生き抜いてほしい。
どうか…どうか幸せに。

お前を守り抜いた。
それこそが俺が生きた証なのだから。


おやじ…おふくろ…。 
俺、帰れそうもないや。 家を飛び出たきりの親不孝息子でゴメンな…。


シスネ…悪い。せっかく見逃してくれたのに、こんな事になっちまったよ。 

おふくろ達の事、頼むな。できれば、事実は報さないでくれないかな…。 

ツォン、案外いい奴で、あんたの事嫌いじゃなかったよ。

カンセル、俺がいなくなったら、少しは悲しんでくれるかな。


みんな、みんな、
    ありがとう。





呼吸が浅くなり、もう指先すら動かない。 


少し前までの全身の激痛は嘘のように消え、今はもう何も感じない。


降りだした雨が、流れ出る血を更に流し、容赦なく体温を奪っていく。 


みるみるうちに、色を失っていく唇が微かに震えた。


まるで、誰かの名を呼ぶかのように…。



  アンジール…
 俺、英雄になれたかな 


アンジール、アンジール…星に帰れば会えるかい? 

よく頑張ったなって。
えらかったなって。

あの大きな手で、頭撫でてほめてくれる?

温かい腕でギュッてしてくれる?


会いたい会いたい会いたい  アンジール…。


そう思うと、怖くないよ




何だか気持ちいいな…… 



 視界がかすみ
   瞼が重くなる。


 薄れゆく意識の中 
   厚い雲の切れ間
    青空から 


片翼の天使が 
  その美しい翼を輝かせ
  
 舞い降りてくる 


   幻を 
    見た 
     気がした。




まるで、その姿を留めようとするかのように。 

そっと瞼を閉じる。


                       


ザックス達が去った後のバノーラに、神羅のヘリが降り立った。 


中から出てきたのは、正規のソルジャーとは違う、正体不明の二人。 


「我らの兄となる存在らしい…。」

「果たして彼は受け入れるのか…。」

不吉な言葉を口にして。

意識の無いジェネシスを抱き上げ、連れ去る。



数年後、星を襲う数々の災厄の一つの誕生であり。


それはジェネシスにとって新たな試練の始まりでもあった。




『星の希望の雫となりて』

『地のはて 空のかなた   はるかなる水面』

『ひそかなる贄となろう』



黒い羽根が一枚、ヒラリと静かに風に舞った…。

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