再会の扉(長編小説)

□それぞれの目覚め
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逃げなくては。
   逃げなくては。 

誰にも見つからないよう。   ここから遠くへ。 



『それでもソルジャーか?そんな情けないソルジャーはいらない!』

「待ってくれ…!アンジール!」



実験カプセルの向こうに、アンジールの姿を見た気がして、目覚めたザックス。 

クラウドを助け、屋敷地下から逃亡し、神羅から追われる身となっていた。


逃亡中の二人が乗っている神羅製のサイドカーは、シスネの物。 

俺達を追ってきたはずなのに、見逃してくれた。

それが今の俺にとって、どれ程の救いになった事か。ザックスは心の中で、何度もシスネに頭を下げた。


そして知らず知らず立ち寄った故郷で、アンジール…をコピーされたラザード統括に会った…。 


「不思議な感覚なんだ…復讐の事など忘れてしまった…………そう、私は世界を救いたい。」

アンジールの顔で。アンジールと同じ事を話す。
コピーされた細胞が、この想いを呼び覚ましたのだろう。 
人を変えてしまうほどに、心を揺さ振る彼の想い。


「不思議でもなんでもない。それがアンジールなんだから…!」


ザックスはまるで、自分の事のように、自慢気に胸を張った。

そんな姿に、ラザードは目を細める。



「ジェネシスを止めなくては。」
ボソリと呟くと。

「俺にはアイツが言ってる事、さっぱりわからないんだ…。」

とぼやく。

遠くを見つめながらラザードが答えた。

「アンジールが導いてくれる…かな。」


その言葉に勇気付けられたザックスが、力強く話す。

「統括、アンジールと一緒に力を貸してくれよ!みんなでやりとげたら、俺たちは英雄だ!」



そうしてジェネシスを追い、バノーラへ向かう事になった。





到着したバノーラは静寂に包まれ、かつての村の形跡は見られない。
地面のあちこちからは、碧白く輝くライフストリームが漏れ出している。

その美しい光景を見つめるザックスの背後に、ラザードが舞い降りた。 


「統括、クラウドを頼んでいいか?」

振り向き、静かに問いかけた。 

「ああ。命に代えても私が必ず守る。」

ラザードのその言葉に安心したように頷き、ザックスは一際ライフストリームが吹き上がる大穴の底へと降りて行った。




行き着いた先に、ジェネシスの姿があった。
こちらに背を向け、静かにLOVELESSを暗唱している。



「遅かったな…。」


ザックスに気付き、静かに振りかえった、その劣化が進んだ姿に息をのむ。 


「俺は、あんたを救いにきた…!」
今度こそは、と言葉に願いを込めた。

そんなザックスの言葉を無視するかのように、LOVELESSの続きを口にするジェネシス。 


『……冥き空より
 女神が舞い降りる……』


静かに掲げた手の先、上空に、赤い球体が不気味な光を放つ。


「みんな、星に帰るのさ…。もちろん、おまえも……今や、俺は星の加護を受ける…。」


そう言い放つと、ジェネシスは剣を高々と掲げた。

赤い球体にライフストリームが吸い込まれていく。 

「もっと聞かせろよ!言葉を捨てるなよ!!」


悲痛な叫びも、もはやジェネシスの耳には届かず。


咆哮し、姿を変えてゆく。

「この野郎…!!」



二人の最後の戦いが始まった。 
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