再会の扉(長編小説)
□交錯する想い
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アンジール…
戦争が終わったよ。
みんな、喜んでる。
でも 俺は…
アンジールがいない。
それだけで、こんなにも毎日が辛いなんて。
俺を見ようとしない、あの時の後ろ姿…。
思い出すと、胸が焼けるよにヒリヒリと痛みだす。
今、どこにいる?
どうして何も言わずに、行ってしまった?
あんなに愛してくれたのは、全て気まぐれだった?
それに、ジェネシスが残した言葉…。
『お前に、この痛みはわからないさ…。』
そして あの黒い翼は…。
「わかんねぇよ…。アンジール…。」
こうしている今も、二人は一緒にいるのだろうか。
ジェネシスによって、植え付けられた黒い種は、芽を出し、切れない蔓となって、ザックスをがんじがらめにしていく。
「これから、どうするつもりだ?」
遠くを見つめ、アンジールが問いかける。
「さぁ…。とりあえず、神羅の本社ビルでも、襲撃してみるか…?」
軽く答えるジェネシス。
「…おい!本気か?」
「さぁ…、どうだろう?」
相変わらずの、読めない微笑みをたたえる。
「…そのうち始まるであろう、劣化を止める方法…それが知りたい。」
「そうか…。」
「あの男を一人にさせるわけにはいかないさ。」
淡々と話す親友の言葉に、アンジールは静かに耳をかたむけた。
「あの男は勘のいい男だ。
俺達の失踪の理由をすぐに、探り当てるだろうし…。
遅かれ早かれ、いずれ…自分の秘密を知る事になるだろう。」
確かに、その通りかもしれない。あの男は、頭がきれる。
あのプロジェクトの事など、あっという間に調べあげるだろう。
そして、ジェネシスの言う通り、いずれ自分自身の秘密にたどり着く事になる。
「多分、そうなった時、あの男は脆い…。」
「あいつが?」
「例えるなら、鋼の剣。」
ハガネ…。ああ、そういう事か。
「切れ味、硬度、共に最高だが…。…衝撃に弱い。
刃なら欠けるし、刀身なら折れる…。」
さすがはジェネシス。よく見ている。
「そうなった時、一人にさせるわけにはいかない、と思ったのさ…。」
そう言い終えると、考え込むように、静かに瞳を閉じた。
「セフィロスを愛しているんだな…。」
つい口をついて出てしまった。
それを聞いたジェネシスが、目を丸くして笑う。
「朴訥としたお前の口から、そんな言葉を聞く日が、まさか来ようとは…。」
「お前なぁ…。」
ああ、余計な言葉を口走ってしまった、とアンジールは後悔した。
その肩をポンと叩くジェネシス。
「そんな綺麗な感情では無いさ…。どちらかというと、憎しみに近いのかもしれない…。」
両手を開き、じっと見つめながら言葉を続ける。
「俺のこの手で直接、折ってしまいたい衝動に、押さえがきかなくなりそうな時があるんだ…。」
アンジールがため息をついた。
「お前…、歪んでるぞ。」
そんな親友の、呆れたような声が、心地いい。
幼い頃から、心の奥底に、狂暴な何かが潜んでいる事に気付いていた。
その“何か”に囚われそうになる度、いつもお前の声が、その淵から俺を引き戻してくれた。
「アンジール、お前が幼なじみで良かったよ…。」
そう呟くと、ジェネシスは静かに立ち上がった。