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□11.05
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捜査本部――

「あれ、竜崎はどこに・・・?」
「あ、おはよう月くん。竜崎は何だか屋上に行ったみたいだけど・・・。鐘の音がどうとか言ってたなぁ・・・」
「この大雨の中を・・・? 何考えてんだあいつは・・・わかりました、ありがとうございます」


捜査本部屋上――

この大雨の中ただ一人、ぽつんと佇んでいる。・・・竜崎だ。
「おーい竜崎、そこで何やってるんだ?」
問いかけても竜崎には雨音で遮られているためか、聞こえていないようだ。
月は同じ事をもう一度言ったが同じことだった。
言っても無駄だと思ったのか、雨に濡れながら月は竜崎に近づいた。
「・・・濡れますよ」
「もう濡れてるよ」
「何をしにきたんですか」
「それはこっちが聞きたい」
「私・・・ですか」
少し考え込んでから竜崎は口を開いた。
「鐘の音を・・・聴いていたんです。もうひっきりなしで・・・」
竜崎が鐘の音を聴いていたと言うので月も耳を澄ました。しかし鐘の音など何も聴こえない。
「・・・聴こえないが? お前、出鱈目言ってるんじゃないだろうな」
「出鱈目・・・ですか。・・・そうかもしれませんね。でも五月蠅いんですよね、鐘の音が・・・」
「ふざけているのか?」
「ふざけてなどいませんよ」
「本当のことを言えよ竜崎」
月の言葉に竜崎は考え込んだ。しばらく沈黙の時が流れる。
その沈黙を破って竜崎は言った。
「・・・では月くんは今までに本当のことを一度でも言ったことがあるのですか?」
「・・・!?」
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