恋姫無双【記紀奇跡】
□白の章
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「あやー……、変なのがいるよー?」
「男の人だね……。私と同じぐらいの歳かなぁ?」
「二人とも離れて。まだこの者が何者か分かっていないのですから」
大地で寝転がる青年の周りに、三人の少女が集まる。その声で、青年の意識は浮上し始めた。
「でも、危ない感じはしないのだ」
「ねー。気持ち良さそうに寝てるし。見るからに悪者ーって感じはしないよ? 愛紗ちゃん」
三人の内、一人。ちみっこい少女は頭の後ろで腕を組み、屈託の無い笑顔を浮かべる。それに追随するように、羽飾りをつけた穏やかな少女が、ふわりと微笑んだ。
その様に、三人の内の最後の一人、愛紗と呼ばれた黒髪の少女は瞳を吊り上げ、寝そべる青年を見る。
「人を見た目で判断するのは危険です。特に乱世の兆しが見え始めた昨今、このような所で寝ている輩を――」
少女の声が最後の一押しだったのか、青年が寝覚めの呻きを上げた。
「っ!? 桃香様、下がって!」
黒髪の少女が桃香と呼んだ、穏やかな雰囲気を宿した子を後ろに構える。その身のこなしは、ある程度の武芸を嗜んでいるように見えた。背後では、桃香と呼ばれた少女が慌て、勢い余って転んでいたりするが。
「おー、このお兄ちゃん、起きそうだよー」
ちみっちゃい子が、起きる兆しを見せた青年を突っつくも、愛紗と呼ばれた黒髪の少女に「こら、鈴々!」と叱られる。どうやら、最年少にも見えるその小さな少女は、鈴々と言う名らしい。
だがそんな事は青年には未だ解らず、「んん……」と呻きを上げては、黒髪少女の警戒を強めるだけだった。
そして青年は瞳を開く。やや気だるげに――さながら、いつものようにベッドの上で目覚めたように……。
ふわりと欠伸して、上体を起こし、寝惚けた脳で異常な違和感を青年は感知した。
「…………………………んん?」