明かりが燈る日を夢見て

□彩色
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どれくらい歩けば大人になれるの?
幼い私は懸命になって答えを探した
夏休み連れて行ってもらった海岸で
拾った貝殻に問いかけた
「ねぇ、もうたくさん歩いたよ
もう少しで大人になれる?
あなたをもう1度海に還したら
遠いところに流れていって
えらい人のところに届いたら
答えを教えてくれるかな?」


私はあの頃からどれだけ歩いたんだろう
大人になった今考えてみたけれど
結局答えは見つからなかった
あの頃とは比べものにならないくらい
たくさんの距離を歩いたけれど
それはどれ程のもの?
あの貝殻が浜辺に打ち上げられていて
もう1度問いかけたら
今度こそ答えを知らせてくれる?


…くだらない。
答えの見つからないものを
ひたすら追いかけていたあの頃を
嘲笑う気にはならないけれど


懐かしいその景色は
今となってはくすんでおぼろげだけれど
アルバムを開けば
貝殻を握り締め満面の笑みを浮かべる私が
悔いのない今この瞬間を彩っていた







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