4周年感謝企画

□つかいわけ
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ようやく色の付きだした空と、皮膚を刺すような冷たい空気。
西の空はまだ夜が残っているが、雲は見当たらない。
「今日は晴れますね」
白に近い青空に向かって、八戒は小さく呟いた。

手に冷たさを通り越した痛みを感じながら洗濯物を干し、軽く掃除機をかける。
悟浄の部屋にも遠慮なく入り、膨らんだ布団の周りは重点的に掃除する。
しばらくするとその布団が少し動き、赤い頭が小さくのぞいた。
「…それ、毎朝、きついんすけど」
「ああ、おはようございます悟浄。おかげで清潔に気持ち良く部屋を使えるでし
ょう?」
にこりと微笑みながら、八戒は見せ付けるように掃除機のスイッチを強に入れる
。決して新しい型ではないその掃除機は、轟音と呼んで差し支えないような音を
立てて床を吸った。
「あああ、起きるって、起きるから!」
もぞもぞと布団のかたまりが動いて、八戒は小さな声で笑った。

悟浄が起きてくるまでの間に朝食を作る。
まだまだ寒いこの季節、身体が温まるようなものを。
ちょうどできる頃、寒いやら眠いやら呟きながら悟浄が現れた。
部屋には凛とした黄に近い橙の朝日が差し込む。
立春とは名ばかりの寒さが続く、2月の半ば、いつもどおりの朝だ。


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