LONG story
□出会い
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朝の田舎道のハイウェイ。
漆黒のクラッシックカー・インパラは、対向車に出会うことなく走り続けて数時間が経過していた。
車内ではオールドロックを大音量で鳴らし、小さく口ずさみながらハンドルでリズムをとっているディーンと、助手席で迷惑そうに顔をしかめながら、地図を見ているサムがいた。
「この分だと、夜には次の街に着きそうだよ」
言いながら、サムは地図をたたんだ。
「仕事はあるのか?」
「今のところ、これといって見つからなかった」
「そうか。仕事仕事でクタクタなんだ、たまにはゆっくりしようぜ」
ニッと笑ってこちらに視線を送ってくる兄を、サムは呆れたように見やる。
「女の子と遊びすぎて疲れてるだけだろ?」
「仕事はちゃんとしてただろ?俺はプロだからな。文句は言えないはずだ」
そういい放つディーンに、サムは呆れて溜め息をついた。
確かに仕事は疎かにしてはいなかった。
だが、サムはここ毎日の様に外泊をしている兄を見るのはそろそろ限界だった。疲れていようが、女性のこととなると目の色を変えるディーンのそういう一面が、サムにとってはこの上ない不満の一つだ。
「街に着いたらバーに行こうぜ。仕事もないことだしな」
どうせナンパだろ。
その言葉をサムは飲み込んだ。
自分の嫌いな話題をこれ以上引っ張る必要もない。
サムはそう思い、次の街までの時間を、睡眠に費やそうと瞳を閉じた。