NOVEL

□修羅(R15)
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「はぁ…、はぁ…ッ、っつぅ、」

河原の路地裏で、銀時は妖刀「紅桜」を持った岡田似蔵に襲われた。辛うじて撃退するも、愛刀はボロボロ……そして自らも重傷だ。
もし、ここで……次なる刺客に襲われたら自分は太刀打ちできないだろう。
あくまでも、岡田クラスの刺客ならば……だ。

「(勘が、鈍ってんのか……)」

応急処置も出来ない状態で傷口から流れ出る血が着物の色を吸って赤く染まる。これ以上広がらないように銀時は動かせる手で傷口を抑え、軋む身体に鞭打って歩く。
ピチョピチョと落ちる血が……獣を呼び寄せる餌とも知らないで。

「せめて、……」
「よ〜ぉ、銀時ィ〜。何だ、其の様は?白夜叉ともあろう者がそんな手傷を負うなんて……堕ちたな。」

河原の土手を歩いていたので土のにおいに混じって気が付かなかった。目の前の自分の進行先にいるのは既に袂を分けた、嘗ての仲間であり今は敵の男……。

「た、かすぎ……、っぃつう!!!?」

通常の人間ならば一瞬で失神する程の強い殺気を、銀時は彼に向けるが、高杉はそれをものともせず、煙管を吹きながら手負いの獣状態の銀時に近づく。煙管に混じって香水の匂いが辺り一面を狂わせる。
その隙を衝かれ、銀時は一気に間合いを詰めた高杉によって土手の芝生(野原)の上に押し倒される。銀時の目の前に映るのは月明かりを受けて妖しく輝く彼の美麗な笑み。

「な……!?おい、やめろ、高す―――っぅ、んぅ!!」
「・・・・・砂糖菓子の匂いがする……」
「ちょ、まッ、…たか、…!?」

一瞬。眼を奪われた。
ほんの一瞬だが、それは銀時にとっては命取りともいえる刹那の時間。唇を舐められてくすぐったさに耐え切れず、口を空けるとその間を狙って高杉の舌が侵略してくる。
容赦なく自分の口腔や舌を犯す高杉の舌に銀時は息が詰まり、且つ高杉の持つ甘い香水の香りに酔わされていた。
蹂躙した後、舌は銀時の口腔から抜け、そのまま顎を伝って首筋から鎖骨に行く。重傷で余り抵抗できない銀時を良い事に高杉は思う存分銀時の身体を征服し始める。

ガリ、と皮膚が裂ける音がした。高杉が左鎖骨の上辺りに自らの所有の証拠となる赤い花弁を撒き散らしたのだ。

「銀時……てめぇはあんな甘ったるい砂糖の匂いなんかじゃなくて、……血の、夜叉の匂いがお似合いだぜ……白いてめぇの肌に赤い血はよく映える……クククク。」
「高杉、てめぇ何が目的、だ……ッ!!」
「目的?俺がてめぇに求めるものなんてたった一つしかねぇよ、銀時。」

銀時の問いに、意図も簡単に返答し、闇に染まった瞳を向ける。
それは狂気の瞳。狂った愛情から生まれ出る感情が支配する瞳。

「―――わかってんだろう?俺はてめぇの中に眠る”白夜叉≠起こしに来たんだ。最早攘夷志士の連中の中じゃ伝説扱いの、お前の中の夜叉を。」
「・・・・・・・・俺は、白夜叉を……捨てた。」
「だろうなァ。白夜叉なら岡田ぐらい返り討ちにしちまうもんなァ。……だが安心したぜ、銀時。てめぇはまだ完全に娑婆に染まりきってねぇって事を知れたからな。」

煙管を吹きながら高杉はさも嬉しそうに答える。彼の目的は銀時の中に眠る、荒ぶる夜叉を揺り起こす事。其の為だったらたとえ関係ない人を何千人と殺そうが構いやしない……、それを実行に移せる程に高杉は白夜叉に酔っているのだ。
先ほど出した強い殺気がそれなのだろうか。



「久々に楽しませてもらうぜ……銀時。俺を失望させんなよ?」




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