Zmain

□音楽
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コンコンとドアをノックする。
それと同時に曲が止まる。

「何だ?」

あぁ、やっぱりこの人が弾いてたんだな、と。

「レノです、と。書類を提出しにきました」

「入れ」

失礼しまーす、といつもの飄々とした調子で部屋に入った。
その中に、いつもは無かった大きなグランドピアノが一つ。
さっき、社長はこのピアノで曲を弾いてたんだな。

もう一度だけ、弾いてくんないかな…。

「どうした?ぼーっとして…」

「あ、いや、その…あ、コレが書類です、と」

ドサァッ!!!と百枚…いや、それ以上の書類の山を社長のデスクの上に置く。
その書類の山を見て一瞬だけ社長は目を見開いたけど、そのあとは呆れたようにため息をついた。

「またお前は…随分と書類を溜めたな…」

「え、あ、あはは…」

もう渇いた笑いしか出ないや…。
というか、社長の目が恐い…。
かたん、と椅子から立ち上がった。
あ、ヤバイ。

「レノ、怒るぞ?」

じりじりと壁際に追いつめられる。
ヤバイヤバイヤバイ!かなり怒ってる!

「わ…」

うわ…もう壁…!
どうすれば社長を止められ……あ、ピアノ…。
…!そうだっ!

「ぴ、ピアノ!」

ぴたっと社長の動きが止まる。
また、何か地雷でも踏んだか…?

「ピアノ…?」

「そう、ピアノ!もう一度だけ弾いてくれませんか、と?」

ふむ…としばらく黙って考え込む社長。

「…お代は後で貰うからな」

「お代?いくらですか、と?」

「秘密、だ」

ふっ、と何か企んでいるような笑みを溢す。
うわ…何かある。
絶対何か企んでる。
あの人は、そういう人だから。

「先に言っておくが、あまり上手くは弾けないぞ?」

「社長のだったら何でもいいんですよ、と!」

「…分かった」

…たん…

 
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