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□本命を君に
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――2月14日

バレンタインデー
年に一度、女の子たちがそれぞれ想いを込めて、大切な人にチョコを渡す一大イベント

木の葉の里も例外ではなく、街中には甘い香りが漂っていた。






「アスマ先生にもあげたし、これでオッケーね!」


そう明るく言うのはイノ。
こういったイベント事が大好きな第10班の紅一点である。

サクラと共に作った手作りチョコを、下忍仲間と担当上忍に配ってきたところだ。
もちろん義理だということを付け加えて。

隣を歩くのは同じ班員のチョウジ。


「チョコありがとう、イノ。」

「毎年のことじゃな〜いvみんなも喜んでくれたし、満足だわ!」


端から見れば、満足そうに微笑むイノ。
しかし、幼なじみであるチョウジは分かっていた。
イノが無理に明るく振る舞っていることを。


「イノ、もう一つあるでしょ?」

「……」


イノのカバンの中には、他よりも綺麗にラッピングされた箱が1つ。
それを手に取ったイノはそのままチョウジへと渡す。


「これ、チョウジにあげるわ。」


そう言うイノの顔はとても寂しそうで…


「だめだよイノ、ちゃんと渡さなきゃ。」

「…でも…シカマルは…」


それは10班のもう一人の班員、そして…イノが想いを寄せている相手……シカマルのものだった。


「無理よ、アイツ任務だもん。」






一週間前、シカマルの予定を確認してみたところ聞かされたこと。


「え、任務!?」

「あぁ、10日から5日間くらい。」

「5日間って…帰るの15日〜!?」

「まぁ…なんだよ、何かあるのか?」


イベント事にまったく興味のないシカマルはバレンタインということに気づくことはない。
それを教えるわけにもいかず、イノは言葉を濁す。


「え…ちょっとね……それより任務って危ないやつ?」


忍びにとっては、毎日が死と隣り合わせの生活。
下忍のときは雑用任務ばかりなのでそうでもなかったが、シカマルは1人中忍に昇格してしまった。
これからの任務は常に死がつきまとうだろう。


「いや…砂の国での任務だし、護衛もつくらしいからな。」


砂の国……

その単語にピクリと反応するイノ。


「ご、護衛って…テマリさんたち…?」

「まだ分かんねーけど、たぶんそうなるだろうって。」

「そっか…分かったわ、ありがとう。」


それ以上いるのがツラかったイノは足早に去って行った。

 
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