絶対守護獣
□騒動1
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「馬鹿だ。」
「へへ、ごめん。」
「それは何に対しての謝りだよ。」
「黙ってたこと?」
「…はぁ、だから馬鹿だっつーんだよι」
暗い森の中に2人。
シカマルの手のひらから優しいチャクラが溢れ、それにより流れ続けていた赤が止まった。
困ったような、怒ったような表情のシカマルと
嬉しいような、申し訳ないような表情のキバ。
これは互いを想っての結果。
木の葉の里は現在多忙期。
忍び不足など関係なしに、任務は入ってくる。
里最強である爪覇はひっきりなしに任務に赴いていた。
それこそ昼も夜も関係ない程に。
唯一救いは、仲間に正体がバレたことにより、下忍での任務に影分身を残すという無駄を無くせたことだ。
そして、暗部の忙しさに比例して、参謀部や解析部などの内勤もまた忙しく動き回っていた。
里の頭脳とも言われる黒璃は、自分が長を務める解析部のみならず、参謀や開発、医療部諸々の部署から助っ人要請が入り、まさに猫の手も借りたい状態だった。
極端に言えば、今の木の葉は
爪覇と黒璃
この2人によって守られているのだ。
「じいさん!終わらしたぞ!!」
火影執務室へ堂々と窓から入ってきたのは爪覇。
「ご苦労じゃった、すまぬの爪覇…。」
「んーちょっとハードだけどな、平気平気♪」
きっと誰よりも危険な任務を、誰よりも多くこなしているのに
それでも笑顔で平気だと返してくる爪覇を見て、火影は申し訳なさと、感謝の気持ちでいっぱいだった。
コンコン
そこへ静かなノック音。
ドアの向こうから声がした。
「解析部室長、黒璃です。」
「うむ、入れ。」
火影の許可がおり、ゆっくりとドアが開けば、そこには書類やら巻物を大量に抱えた黒璃が立っていた。
「黒璃ーv」
爪覇が抱き付こうとしたのを、スルリとかわし、火影の机へその大量の荷物を置く。
「こっちが解析でこっちが参謀、あとこれが開発からの案件です。」
次々と説明をしていく黒璃。
きっとこれだけの量を一度に担えるのは黒璃くらいだろう。
「わかった、黒璃もすまんの…。」
爪覇同様、ろくに休ませてやることもできない黒璃に火影が謝ると
「みんな自分が出来ることをやっているだけですよ、火影様が気に病むことはありません。」
そう告げた。
そんな言葉が嬉しくて、でもまたまだ子供で、本来なら同年代の子と笑い合っているはずの2人に、ここまで頼らなければならないことが情けなくて…
「感謝するぞ…。」
それ以外の言葉が出てこなかった。
「黒璃ー、ちゃんと食ってんのかよ?」
執務室から出た2人。
しかし、黒璃の顔色があまり良くないことに気づく。
心配して爪覇が問いかければ
「………………まぁ…。」
「うん、食べてないんだな。」
「……一応食べてる。」
「兵糧丸以外でだぞ?」
「…………。」
いつもは、一人で突っ走るキバのフォローをするシカマルだが、こういう面では立場が逆転する。
シカマルは作業に没頭すると、食事の時間さえ惜しいと、兵糧丸や栄養剤のみで済ませてしまうことがある。
それはまだいい方で、時には何も食べないで数日間過ごすこともあるのだ。
「ちゃんと食べないと倒れるぞ!」
「食べる食べる。」
「絶対嘘だ…。」
「じゃあ俺まだ仕事あるから、お前も任務あるだろ?じゃあな。」
そう言って黒璃は去っていった。
(ったく…ヤバくなってきたら無理にでも食わさなきゃな!)
(人の心配ばっかしやがって、自分だってろくに食べてないくせに…時間あいたらどっか食べに誘うか。)
互いが互いを想って…。
それぞれの仕事へ向かうのだった。