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□本命を君に
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アカデミーへ向かって走っていたイノは、向こうから来る人影に気づき立ち止まった。
「シカマル…っ!!」
「イノ?」
それは、一番会いたかった人。
「シカマル、任務お疲れ様!!」
「おぉ、サンキュー。予定より早く終われてよ、ラッキーだぜ。」
ヘヘヘと笑うシカマルにドキッとしながらも、必死で平然を装う。
そのまま、2人並んで歩く。
「ケガとかしなかった?」
「あぁ、ちゃんと護衛ついてたしな。」
「そうだ、テマリさんたち元気だった?」
「まぁな、相変わらず気の強ぇ女だったけどな。」
自分から話をふったものの、はやりシカマルからテマリの話をされるのは胸がズキンと痛んだ。
突然シカマルが「あ」と呟いて立ち止まった。
「どうしたの?」
「テマリで思い出したけど、今日ってバレンタインなんだってな。」
心臓が飛び跳ねた。
まさかシカマルからその話をふられるとは思っていなかったためもあるが、思い出した理由がテマリとはどういうことなのか…
痛む胸を押さえながら、必死に笑顔を作って話す。
「そ〜よ、あんた今頃気づいたの?どうせテマリさんからチョコ貰ったんでしょ?」
返事を聞きたくなかった。
でも、シカマルの口から聞くよりは、自分から聞いた方がマシだと思い、イノは問いかけた。
「はぁ?もらってねぇよ。」
その言葉に目を見開いた。
シカマルにとっては、イノが何故そんなに驚くのかが分からない。
「何驚いてんだよ。」
「だって…じゃあなんでテマリさんの話でバレンタインを思い出すの?」
「ん?我愛羅たちにチョコあげてたからな。」
「シカマルは…貰わなかったの?」
「だからなんでだよ、テマリが言ってたけど、バレンタインは恋人や家族…大切なヤツにチョコあげんだろ?」
俺関係ねぇじゃん、とあっさり言ってのける。
やはり…噂は噂。
イノの顔に自然と笑顔が戻る。
「そっか、そうよね!」
「…よく分かんねーけど、なんかあったんなら言えよ。」
「え?」
「なんか、さっきまで無理してるっつーか、元気なかったからよ。」
そんな素振りは見せていないつもりだった。
ちゃんと笑顔でいたつもりだった。
なのに…
「なんで…気づくかなぁ。」
「ばーか、何年幼なじみやってると思ってんだよ。」
ダメだ…もう抑えられない。
イノは、カバンの中のそれを手にとる。