MIX

□世界をかき混ぜる
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「菊さま菊さま!」



ドタドタと廊下をかける音にシワが寄る彼の眉間。
ああ、今日も素敵です菊さま。後ろに見える黒く禍々しい空気が貴方をいっそう輝かせています。



「出ませんよ。私絶対出ませんからね」

「まだ何も言ってませんわ」

「どうせまたあのフライドポテトとかエヴァンゲリオンとかいう名の外人が来たのでしょう」

「アルフレッド様です。一文字も合ってませんわ」

「あっそう。じゃあそのアクエリオンさんにお伝えください」

「アルフレッド様ですってば。アニメと漫画以外横文字覚えられないのも大概になさいませ」



もう何度目か分からない台詞を彼に投げつけると、明らかに不機嫌そうな表情で彼も答える



「私の趣味に口を出さないで下さい」

「言っておきますけど、アニメや漫画で外交しようとしても無駄ですわよ。どこの国でも通用するものではありませんもの」

「そんな国とは外交しません」

「……菊さま」



半ば呆れる台詞しか吐かないこの人だが、こちとらお仕えしている年月も短くはない。この人の扱いなんて他の誰より心得ている。


菊さまの気まぐれで孤児院からこちらに引き取られて早十数年。彼の身の回りの世話を任せられた5歳の時から彼だけのために生きてきた。
盲目的、いや、もっと酷いかもしれない。だって私にはこの人しかいないのだ。



「ただの外人には興味ありません。あの中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら私のところに連れてきなさい。以上 」

「無理言わないで下さい」

「何が無理なのですか」

「なんか全体的に無理です」

「全否定ですか」



机に頬杖をついて溜め息をつく姿は本当に参っているように見えた。もともと外交や表に出ることが得意な人ではないが、この200年でそれが助長されたのだろう。
仕方ない、と言うべきか



「どうしても……行かなくては駄目ですか」

「……お疲れのようでしたら、またの機会にしていただくよう上司に掛け合ってみますわ」

「じゃあお願いします。正直しんどいんですよ、原稿明けで」

「原稿……ですか」

「うん、今度のイベントの」

「……」

「あれ?」




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