MIX

□independent of your love
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「墓場によー、お前連れてくのもどうかと思うわけよ」

「は、何が」

「墓場はねーよな、墓場は。いやいやさすがに銀さんも墓場には連れてきたくねーよ」

「ごめん、1ミリも通じてない」



なあ?と分からないと断言する私に尚も同意を求める彼にいささか眉をしかめた。お世辞にも気が長いとは言えない私は、分からない話を分からないまま続けられるのが嫌いなのだ。



「墓場ねぇ…」

「銀時お墓に行きたいの?墓石頼もうか」

「墓場はねぇ……」

「定春(2日ご飯が貰えず凶暴化)の前に頭差し出せば一発よ。気楽にお逝き」

「行きてーな、墓場」

「……頭大丈夫?」



ねぇ本当に大丈夫?とそれまで片付けものをしていた手を止めて彼の方を振り向けば彼も読んでいた本から目をそらしてこちらを見た。




「(……銀時が本……?JUMPじゃなくて本……?なんだ錯覚か)」

「お前さぁ、」

「え、なに?」

「俺と…」

「なに、」



ガダガガーン!


その瞬間爆発音がした。



と、思ったら結野アナのお天気予報だった。なんか登場シーンでバズーカ発射してるんですけど。どこまでフリーダム貫くんだこの番組。





『今週の運勢最高潮なのは銀髪天パで"墓場に行きてぇ"とかぬかしてるそこのアナタ!』



「なにこれ、いつから銀時専用の運勢占いになったの」

「ちょ、お前声でけーよ!聞こえないでしょ」

「銀時の良い運勢とか聞きたくないんだよね!」

「くぉら!」



『該当者の天パさん、イチャこいてないでちゃんとこっち向きやがってください』



「(……え、監視されてる…?)」

「ほら、お前がうるせーから」

「その前にもっと言うことあるよね?絶対おかしいよねこの状況!」



『今週のアナタは超ハッピー!人1人くらいハネても隠蔽されちゃうよ!』



「なに言ってんのこの番組」

「なぁ?せめて2人だよな?」

「お前もなに言ってんだ」


『ラッキーカラーはなんか幸せそうな色』


「何色だそれ」

「……」



『ラッキープレイスは墓場です!』



「馬鹿なの?ねぇ馬鹿なの?」

「…さすが結野アナ」

「お前も馬鹿なのか」




弱冠引いた顔を隠しもせず彼に向けると、彼は嬉しそうにこちらを向いて笑った。
もういい、よく分かった。大好きな結野アナに最高の運勢って言われて嬉しいだけでしょあんたは。

眉間によったシワをそのままに台所に行こうとした。


その時だった。






「何すんの」

「抱きしめてんの」

「なんでよ」

「嬉しいから」

「(また結野かよ)よかったね。じゃあもう離して」

「うーん」

「ちょっと、どこ触ってんのよ」

「やっぱさぁ、俺はお前を墓場には連れてきたくねーんだよ」

「大好きな結野アナが言ってたんだから従えばいいじゃない」

「……なに、妬いてんの?」

「べっつに」

「かーあいーなぁ。銀さんのビッグスターが元気になっちゃうじゃん」

「ヤダヤダやめてよ、なんなのよー!今日の銀時おかしい!」

「お前の前だからだよ」

「やめて吐く」

「ちょ、吐くは酷い」




ぎゅーと痛いくらいに抱き締められてグエッと声を出したところで圧迫感から解放された。見れば銀髪の男がやけに真面目な顔をしてる。




「俺が何言いたいのか分からない?」

「高杉の行動並みに分からない」

「壊滅的じゃねーか」




そうだねと少し目線を下げて応えた。駄目だ、私あんたのその顔に弱いのよ。




「俺がさ、一緒に地獄に落ちてって言ったら着いてきてくれる?」

「え、落ちんの?」

「わかんね」

「じゃあ私もわかんね」

「おま、そこは肯定しとけよ空気的に」

「だって先のことなんてわかんないじゃん」

「……」

「もしかしたら明日私が100億万長者になるかもしれないし」

「そうだな、年末ジャンボ当てても無理な額だけどな」

「銀時が私を捨てて新八と付き合うかもしれないし」

「すみません、もっと良い例えありませんか」



つけっぱなしのテレビから笑い声が聞こえた。美味しそうなケーキと真っ白なドレス。

それは見るからに幸せそうな……───


──……ああ、そうか。




「そんなあやふやな未来のこと考えて不安になるくらいなら、今の自分の気持ちに素直でいんの」

「……」

「未来のことは未来の私に任せる!未来の私がきっと何とかしてくれる!」

「ぶは!」



吹き出した彼がそのまま腹を抱えて笑い声をあげる。それがテレビの声と重なって、なんだか幸せそうな色をした。



「俺、お前のそういうとこすげぇ好き」

「光栄だわ」

「男前だなー」

「銀時くらいなら養ってあげなくもないわよ」

「はは、」

「だから、言いなさい」

「……え」

「私に言うこと、あるでしょう?」



にやりと笑えば彼は少しバツの悪そうな顔で笑いながら呟いた



「……気付かれたか」

「銀時がグズグズしてるから」

「お前マジで頭キレるのねー」

「冗談!」




そう言って私は机の上に置かれた銀時の本を指差すのだ。



"結婚は人生の墓場"







independent of your love


(そろそろ恋愛から卒業しませんか?)



for exchange
thanks so much!


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