□私結構一途ですから
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小さい頃って誰でも歳上に憧れるもの。
そうだろう?
俺もご多分にもれずそういう中学生だった。



「先輩付き合ってください」

「いいよー」

「え?」

「で、どこに?スポーツショップ?」

「…いや、そうじゃなくてですね」



彼女は桐青中学野球部マネージャー。誰が名付けたか知らないが、あだ名は"平成の星一徹"。女の子には到底付かないであろう立派なあだ名を持っていた。てか頑固親父じゃねーか。
しかし名前負けするかと言えばそんなことは全くなく、彼女は中学監督が全信頼をよせる名司令塔で、彼女が指揮した試合は未だ負け知らずだった(ぶっちゃけ高校野球の引き抜きは彼女が一番声を掛けられるんじゃないかとかそんな冗談か本気か分からない話も出てるらしい)(ぶっちゃけそんな彼女がいろんな意味で恐ろしい)
そんな先輩だからこそ、野球部男子からも、いやむしろ全校生徒から恐れ敬われ(女子はお姉さま、男子は一徹さまと呼んでるらしい)誰かが彼女に告白するなんて聞いたこともなかった。



「先輩、」

「なーにーよ、準太」

「いや、だから……」

「なに」

「その…」

「私今スコア書くの大変なんだよね」

「…はい」

「それ待っててくれるなら帰り一緒に帰ろうよ」

「、…!」




だけど最近聞いた話では、それも時間の問題らしい。3年生になった先輩はそれはもう、美しくなられた。校内の男子が放っておかなければ、校外の男子だって放っておかない。彼女はそれを面倒だなんて笑い飛ばしていたけど、もし今、彼女のドストライクゾーンに入る殿方が白馬に乗ってやってきて、彼女をさらっていってしまったら…?
そう考えると気が気じゃない。



「白馬って…準太古典的なこと考えるねー。今時白馬なんて時代劇の暴れん●将軍でしか見ないよ」

「先輩さ、」

「ん?」

「さっきの告白意味分かってて茶化したでしょう」

「え?」

「ニヤけないでくださいよ。嘘つくなら最後まで突き通せ」

「いやだってさー」



ふへへ、と表情を崩して笑う彼女は、きっと誰が見ても可愛い。(ちくしょーズルい)惚れた弱味という単語を頭で巡らしながら、俺は斜め右の先輩の表情をもう一度盗み見た。

中2男子と中3女子の1年の差って相当大きいらしく、俺の身長はいまだ彼女を抜かせずにいる。去年よりはだいぶ縮まったとは言え、まだ目線が同じになった程度。



「せーんーぱーいー」

「なーにーよー」

「茶化さないで真面目に考えてくださいよ。俺も真面目に言ってんスから」

「よーし、じゃあ真面目に答えちゃうぞ☆」

「この時点で真面目じゃないんですけど」



呆れた顔の俺にまた彼女はニヤリと笑った。



「私の理想は野球やってる人でね」

「はいはい」

「優しい人でさ」

「うん」

「歳はあんま気にしないんだけど」

「…うん」

「身長は高い方がいいな」
「……」



惜しかったねぇ準太

と彼女はにんまり笑った。俺はムッとして言葉を返す。



「じゃあ俺が身長伸びれば問題ないんスね」

「んー、まあそうなるね」

「じゃあ予約させてください」

「予約?」




頭に?を浮かべた彼女に俺は頷く。だって俺の身長が伸びるまでに先輩がどっかの馬鹿男にちょっかい出されないとも限らないだろ?だからさ、そういう奴等に俺が睨み利かせられるように彼氏候補にさせてよ、先輩。



「それに先輩が他の男にフラフラ行くかもしれないし」

「そんなこと気にしてたの?」



大丈夫だよ、と彼女は自分の胸を叩きながら言った







私結構一途ですから


それから3年後。俺はエース、先輩はマネージャー
そんでもって俺は彼氏、先輩は彼女

(にまにましてどうしたの準太)

(んー、懐かしい夢見たんスよ)

(金髪ボインの姉ちゃんとあはんうふんした話?)

(俺にそんな過去ありませんが)















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for HERO
ありがとうございました





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