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□恋愛式食物連鎖
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好き、だけど。
ぽつりと言葉を零したかと思えば頬を染めて恥ずかしそうにうつむいた彼女にげんなりとした。どうしてどいつもこいつもあんな無口で無粋な男などに惚れてしまうのか。世界不思議発見、そうかこのことか。なら告白でも何でもすればいいでしょう。後ろ姿や食事をする姿を見て満足だなんて君はいつからストーカー痴女に成り下がったんですか。同僚が犯罪者なんて僕は絶対に嫌ですよ。
「でも、だって……」
「でももだっても無いでしょう。いつまでも遠くから見ていたらあっという間にかっさらわれてしまうんですよ、さしずめ猿山の餌のようですね」
「は、恥ずかしいの」
「僕はそんな君が恐ろしいですよ。いつも上から目線で高圧的な態度のくせにこんな時だけ乙女気取りですか。ああ恐ろしい」
「神田って好きな人いないのかな?」
「僕が知るわけないでしょ」
「聞いてきてよ、困った時は助け合うのが友達でしょ」
「君が僕を助けてくれた記憶がないんですけど」
「な、なによ」
「ああもう。グダグダ言わずにさっさと告白してきたらどうです」
「う、」
「そして振られろ」
「、アレンの鬼!もういいラビに聞いてもらう!」
AKUMAとどれだけ死闘を繰り広げようと涙一つ見せず飄々としていた女が、打って変わって目尻に涙を貯めて赤毛の男へと突進していった。僕の方を指差して何やらラビに訴えている奴は目が合うと恨めしそうな顔で僕をにらんだ。一方ラビは困ったように笑って僕に目配せをする。…勘が良すぎる男というのも考えものだ。そんなことに気づく様子すら見せず早速件の相談に入ったのであろう彼女の気配を感じ取り、そっとその場を離れた。
恋愛式食物連鎖
(報われないなぁ)
20110912