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□泣き虫の隠れ家
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特になにもない。

どうしたのと問われてもどうしたもこうしたも何もないのだ。失恋しただとか友達と喧嘩しただとかティキが危篤だとか。そんな些細なイザコザすら今の私にはない。ごめん些細は言い過ぎたわ。謝るから泣くなよティッキー。
だからと言って私の心が脳天気なティキの頭のように雲一つない快晴かといえばそうでもなく、雲どころか最近巷で騒がれてる排気ガスやら工場からの汚染ガス並みに私の心は酷く荒んで、酷く真っ黒なのだ。ねぇティキ聞いてる?つーか脳味噌足りてる?…だから泣くなよ。
この置き場がはっきりしない気持ちは例えるなら死に神のごとく私についてまわり、奈落の底に落ちろと言わんばかりに暗闇が顔を覗かせる。屈してなるものかと踏ん張る足はいつしか疲れてガタがくる。誰かの助けを呼ぼうにも何を、どう、助けてほしいのか私にすら皆目見当がつかないのだ。とうに言葉を忘れてしまった口はそれでも生きてることを主張するかのように小さく呼吸音を鳴らした。


「あー、泣きそう」

「泣けば?」

「ティキが泣いてんのに私まで泣いたらどうすんのよ。ただのカオスになるよ」


言いながらみるみる涙目になっていく私にティキがおいでと囁いた。なにすんのよロリコン変態。本当のことだろ泣くなよ変態。


「あーよしよし、意地っ張りめ」


抱かれた背中と頭を撫でる大きな手に涙腺は決壊寸前に。


「情緒不安定?」

「うるさい」

「泣き虫」

「ティキにだけは言われたくない。あー、もう嫌だ。泣きたくなんかないのに」

「今更はる意地もねーだろ」

「だって、」

「泣ける時に泣いとけ。一緒に泣いてやっから」


真っ赤な目で吐かれたセリフはどこか滑稽でとてもマヌケ。爆笑すると同時に涙腺が決壊した。制御不能と化した感情は、とどめることを知らず涙と鼻水を垂れ流す。


うっわああああああん!


泣くか笑うかどっちかにしろよと暖かい温もりの主が言うが知ったこっちゃない。思う存分笑い、泣き続けた。









ぐちゃぐちゃした心が解けた私は思わずティキのスーツで鼻をかんだ。だから泣くなよごめんって。





20110927

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