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□はやとちり
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「子育てって難しいんだね」


突然前触れもなしに発せられた彼女のつぶやきに、持っていたジュースの缶を思わず落とした。もう何やってんの、と非難する声とともにピンク色のハンカチを手渡されたが今の俺はそれどころではない。子育て?赤ん坊?なにそれ誰の子。


「ご、ごごめん。俺なんか間違えた?」

「え?」

「いや認知しないとかそんなんじゃなくてむしろ大歓迎なんだけど、つーかお前の子だったら愛せる自信はあるんだけど出来れば俺の子がいいななんて考えているんだけども」

「え、なに?どうしたの?」

「むしろいつ分かったんさ!ちゃんと調べたんか」

「ラビ大丈夫?」

「俺のことなんかどうでもいいんだよ。それで?いつなん?」

「えーと、知ったのは1ヶ月前くらいだけど……それってそんなに重要?」

「いいいいっかげつ?!」

「ちょ、ラビ本当に大丈夫?なんか過呼吸めいた音がしてるんだけど!ちゃんと息して!」


視界に入る世界が一瞬でグラリと揺れたかと思うと、冷や汗が次から次へとでてきた。気が遠くなるのを肌で感じたが、倒れちゃ駄目だと頭を振って意識を覚醒させる。頭にハテナを浮かべながら心配そうに見つめる彼女の手を引いて自分の胸に納めた。


「なんで1ヶ月も黙ってたん?大事なことだろ」

「いやあ、ラビがそこまで興味持つとは思わなくて」

「お前は俺をどんな人でなしだと思ってんさ」


頭を撫でてからまだ不思議そうな顔をする彼女のおでこにキスを落とす。くすぐったそうに身をよじってクスクス笑う顔を見ていたら何かがほっこりと胸の奥に落ちてきた。こいつとなら幸せな家庭とか家族団欒とか、そういうのも悪くないな、なんて。


「頑張ろうな、これから2人で」

「うん」

「何かあったらすぐに言うんだぞ」

「うん、分かった。じゃあ今から買いに行ってくるね」

「何を?俺が買ってこようか?」

「ううん、実はもう予約してあるんだ。それにしてもラビが育成ゲームに興味あるなんて知らなかった。2人で頑張ってクリアしようね!」

「え?」

「え?」





はやとちり

(ま、まぎらわしい!)
(あっはははは!)




20110810

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