「なにか食べたいものあるか?」
「トムヤムクン」
「難易度たけーさ」
笑ってパスタでいいよな、と彼は今夜の献立を復唱し始めた。トマトソースパスタモッッツァレラゾエナマハムノハルヤサイサラダグダクサンコンソメスープ。
…なんかの宗教か。
「あ、牛乳ない」
「役立たずな冷蔵庫だね」
「お前ね、冷蔵庫は四次元ポケットじゃないのよ?冷蔵庫に謝れ」
「ごめんください」
「……」
「間違えた、ごめんなさい」
「びっくりした。一瞬なにが起きたかわからなかったさ」
固まった彼の時間は動き出し、すぐさまクローゼットの扉に手をかけた。
「どこか行くの?」
「いや牛乳買いに…」
「えー、まだコーラあったよね?コーラでいいじゃんコーラ飲みたい」
「だぁめ」
「なんでよ」
「ジャンキーなものって身体に悪そうだろ」
「うっそ、じゃあポテチも駄目なの?マックも?やばいなにそれ聞いてない」
「言わなくても分かれよ」
「嫌だ分からない分かりたくもない」
「はいはい。じゃあ7ヶ月ジャンク断ちさね」
「いやぁあああ!」
「我慢しなさい。ご褒美にチューしてあげるから」
「嫌だ、いらない。ポテチの方がいい」
「んだとコラ」
言うが早いか後頭部をがっちりホールドされた。ゆるく抵抗するもされるがままになり、触れるだけのキスが降る。
「……じゃ、良い子で待っててな」
「、過保護すぎ」
「いいじゃん、心配くらいさせて」
へにゃりと笑って、彼は鼻歌を歌いながら玄関を出て行った。
対する私は、3月にも関わらずいまだに仕舞われることのないコタツに潜りこみ、お腹にポンッと手を置いた。
「困ったパパだね」
ホットミルク
(なにこれあっま!)
(俺の愛情たっぷり砂糖たっぷり)
(おえっ)
(オイ)
20110309