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□嫉妬
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「いいんだよ、私知ってるんだから」
「あのねぇ、」
言いかけてからまた先ほどと同じ言葉を紡ごうとした自分の口を塞いだ。これじゃ埒があかない。
「結婚前夜には電話でデリヘル呼んで独身最後の夜を楽しむんでしょ。知ってんよ!」
「馬鹿じゃないんですか君」
通算3回目となるセリフが口から漏れた
「馬鹿?そうね、馬鹿よね。そんなこととは知らず結婚前夜にアレンの部屋にきちゃったんだから。こんちくしょう!」
「君ちょっとキャラ崩壊してますよ。いいから落ち着いて紅茶でも飲んでください」
「なによ、なによなによ!どうせ紅茶には睡眠薬が仕込まれてて私が眠ったと同時にネコ耳つけたビッチが嬉々として乗り込んでくるんでしょう!くそったれ!」
「はいはい、酒乱なのもいい加減にしてくださいねー。大体結婚前夜にどこの馬の骨と飲んできたんですか。もし男だったらうっかり嫌がらせしちゃいますよ僕」
「酔ってないの!逆に酔ってるとしてもそれはちょっとアルコールで千鳥足になって暴走してるだけであって決して酒乱ではないのよファック!」
「十分酒乱だよ」
ゴネる彼女をなだめて抱きすくめれば、最初はジタバタしていたものの、すぐに大人しく僕の胸にその身を委ねた。惚れた弱味とは恐ろしい。こんなに酒癖が悪くて訳の分からない女でも、他の男に渡したくないほど惚れ込んで明日には式をあげてしまうのだ。少し嫉妬深いくらいなんでもない。むしろ愛しく思う。
「……刻んで繋がらないようにしてやる」
「……」
いやな予感がして彼女越しに電話機を見れば、電話線の屍が広がっていた。おい嘘だろ。そしてどこにいった、僕の携帯。
嫉妬
(だからデリヘルなんて呼ばないっつーの!)
20101215