ファインダーとは。
黒の教団においてエクソシストのサポート及びイノセンスの存在箇所を第一線で探す、体力・能力ともに優れた精鋭部隊の名称である。イノセンスを持たない生身の人間であること、そして常に第一線に置かれることからその身は時として危険にさらされ、命を失う者も多い。だがしかし家族をAKUMAに殺された者達や熱心な信者により志願者は後を断たず、多くの者が所属する。
僕のファインダーについての知識を総括して述べるならばこの通りだ。そして僕は、ファインダーとはこういう人達が所属するべき場所だと思ってた。つーかそういう人しかいないと思ってた。
今の今まで。
「あの、」
「なんですか、ウォーカーさん」
「また行き止まりですけど」
「見ればわかりますけど」
高い塀で囲まれた路地裏の行き止まり地点。さっきまで一番高い位置に合った太陽は、既に傾きかけていた。何時間歩いたか分からない足はくたびれ、これ以上歩くことを拒否している。夏の西日の威力は凄まじく着々と僕の体力を奪い取る。そして何より僕を疲弊させているのはこの悪びれた様子1つ見せず飄々と地図を眺めている目の前のファインダーだ。
「列車を降りたときはまだお昼だったんですけどね。いつの間にかもう夕方だ!」
「まあ5時間歩きましたからね。そりゃ夕方にもなりますよね。ウォーカーさんって時計読めないんですか?」
「そういうことじゃなくて……なんで道案内役のファインダーが道に迷うんですか、おかしいでしょう。なんで地図が読めないんですか、おかしいでしょう!」
「なんで私が地図読めると思ってるんですか。読めるわけないでしょう」
「ちょっと…今までどうやって案内役してたんですか……」
「みんな各自で地図を見てましたよ」
「…君はその間何してたの」
「心の中で応援してました」
「それいる意味あんの?」
「存在価値からして意味がありますから」
「……」
無言になった僕に一瞥もくれず、彼女はもと来た道をすたすたと歩き始めた。
こいつに任せてちゃ一生任務地につかない。そう悟った僕は彼女の地図を片手に目的地へと向かった。なんてことはない。僕らがお昼に着いた駅から徒歩10分の場所だった。迷うことが奇跡だ。
「私のお陰ですね」
「どの口が言うんですか、え?」
「じゃあ早速宿で涼みましょうか」
悪びれもせずそうのたまった彼女に軽く目眩を覚えた。
「何言ってるんですか。聞き込み調査に行きますよ」
「行ってらっしゃい」
「君も行くんですよ!」
「私地図読むとか慣れないことして疲れたんで無理です」
「君本当にファインダー?」
「ウォーカーさんも自分で宿取ってくださいね。私は自分の分しか取ってないんで」
「ちょっと」
「なんですか?」
「君いつもそんな感じなの?」
「?そうですよ」
「みんな怒らないわけ?例えば神田とか」
「神田さんは私が宿取り忘れたら無言で野宿してくれますよ。私は野宿なんて死んでもしませんけど」
「おい」
「あとラビさんは私が疲れたらおんぶしてくれます」
「こいつファインダーに入れたの誰だよ」
「ちなみに私、明日はお休み貰うんでAKUMA退治とか1人で勝手に行ってくださいね。ファイト!」
「もうお前ファインダーやめろよ!やめてくださいお願いします!」
そして異端児は微笑む
(私型にはまらない人間なんで)
20100804