「誕生日らしいな、神田ユウ」
「あ?」
真っ昼間の食堂でヤケに視線……というか死線を感じた。もしやと思い振り返れば案の定、自称助っ人やらが尊大にふんぞり返って俺を見ていた。1秒たりとも目線をそらさず、かと言って冷やし中華を食うのもやめないなんとも異様な光景だった。
「……んだよ」
「そうつっかかるな。折角祝いの言葉でもくれてやろうと思っているのだからな」
なにしろ今日の私はこの上なく機嫌がいい。女はハンッと嫌な笑みを浮かべた。
「いらねーよ」
「嘘つくな。お前のツンデレは見飽きたぞ」
「死ねよ」
「こんな世界に生まれてくるなんておめでたいじゃないか。運がないとはお前のことを言うのだな、神田」
「死ねマジで死ね」
箸を投げながらなにかの呪いのように呟いたが、女はあっさりと箸をよけて冷やし中華を食べ続けた。喰えねぇっつーかイケスかねぇっつーか。女じゃなかったら地の底に沈めてる。
「時に神田、お前はプレゼントの用意はしたのか?」
「あ?」
「プレゼントだ、プレゼント。私は高ければ何でもいいぞ」
「なんで俺がテメェにプレゼント渡さなきゃなんねぇんだよ。普通逆だろ」
「何を言う、この負の塊め」
「負……?」
「貴様が私にプレゼントを寄越すのが筋に決まってるだろ」
「だからなんでだよ」
「私は貴様の世界の一部を作り出してやってるんだぞ。私に出会えたことにもっと感謝しろ、崇めろ、跪いて己の非力さを詫びろ」
「……」
「この愚民めが」
おめでたい日
(おい、誕生日ってそういう日だったか…?)
20100607