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□君と私の間
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『どうしたの?こんな時間に。』
日にちが変わる少し前、アレンが部屋にやってきた。
「どうしたの、って分からないんですか。」
『うーん…何かあったっけ?』
本当は知ってる。あと15分たてば私の産まれた日ってことも、アレンがそのために来てくれてるってことも。まめだなー、なんて思いながらも、何となく自分からは言いたくなくて知らないふり。
『わからないや。』
「そうですか、じゃあ良いです。帰りますね。」
『え、ちょ、ちょっと、アレンさん?』
「だって分からないことを言われても君は困るでしょう。」
『困らないよ、全然困らない…!あ、あれでしょ?私の誕生日でしょ!?』
その瞬間彼は少しホッとしたような顔をして、良かった、自分の誕生日も分からない馬鹿じゃなくて、と言った。その笑顔がまた憎たらしい。
「あれですよね、知らないふりなんて所詮君には出来ない芸当だったってことですよ。」
『…!気付いてたの!?』
「あれで気付かないと思うなんて馬鹿ですね。馬鹿は馬鹿なりに自分の身の丈に合わない行動は避けるべきだと思いますよ。馬鹿って可哀想。」
『誕生日目前にそんなこと言われる私の方が可哀想。』
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あと10分で誕生日だというのに今年一年間のダメ出しをされた気分だった。15歳のうちに何度アレンに馬鹿と言われたことか。何度人間として自信なくしたことか。
「そう言えばあと10分ですね。何か15歳までにしておきたいこととかないんですか?自分の名前を思い出す、とか。」
『私のこと馬鹿にしてるよね、アレン。言っておくけどあと10分でアレンより1つ年上になるんだからね。馬鹿にすんな!』
「外見ばかりで脳みそが歳に追い付いてないって相当可哀想なことですよね。すみません、外見も追い付いてませんでした。」
『何で胸見て言うの?ねえ、何で!』
あと8分。15歳のうちにやりたいこと、というより、ハッキリさせたいことは一応あった。でもこの雰囲気ではとても無理そうだ。
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