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□ジュリエットの逆襲
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「ちょっとちょっとお兄さん」
「なんだいなんだいお姉さん」
「私昨日すんごく面白い夢見ちゃった」
「……へえ、そりゃ良かったな」
にんまり笑って、彼女は自分の机を俺の机に近づけてきた。お揃いのブレザーが触れ合うほど近づき、グレーのスカートがヒラリと舞った。
毎度思うが彼女が言う"すんごく面白い"はすんごくロクでもないことが多い。しかも机近づけるとか何する気だこいつ。やめろ俺は別に聞きたいなんて言ってない
「私らが恋人の夢」
「悪夢だな」
「またまたぁ」
彼女のどこにそんな言葉を言う余地があるのだろう
「天敵同士なんだけどね」
「今もじゃねーか」
「またまたぁ」
だからどこにそんな余地が。
「私がなんかの正義っぽい機関に所属しててティキが悪者っぽい奴等の手下だったよ」
「すべてがグダグダだなお前」
「でも愛し合ってました」
「すんません胸クソ悪いんですけど」
「そんで私の暗殺を組織に命じられたあんたは私を殺そうとすんの」
「いきなりサスペンス突入したな。お前の夢センスねェ」
「ティキったらワカメみたいな頭してタキシード着てたよマジうける。ワカメは今も同じかマジうける」
「ちんちくりんのお前に言われたくないな。どうせその夢でもちんちくりんだったんだろ」
「えー、夢の中では銃とかぶっぱなしててカッコよかったよ」
「夢さまさまだな」
「あとね、ラビと神田とアレンに似た人も出てきた。みんな私の仲間。つまりあんたの敵」
「へー別に興味ねーわ」
くわ、と欠伸を1つ
次の授業まであと何分だ?と聞けば2分との問い。
お前の下らない話のせいで寝そびれたと文句をたれればでも面白かったでしょとまだ飽きもせずに話の続きをしようとする。別に面白くなんかねーよ。お前が他の男共に囲まれてる夢なんざ。俺がお前の敵なんつー夢なんざ。夢でさえ報われない恋してる夢なんざ。
「結論、夢でよかった」
「だろうな」
「天敵関係なんて現実だけで充分懲りてるし」
「そーそ、……は?」
「報われない恋はしたくないからね」
現実では。
ジュリエットの逆襲
(もっと夢中にさせてよ)