「これどういう技なの」
「……どうしたの、たっちゃん」
「その呼び方やめろ」
練習帰りなのか、帰宅後すぐに来たのか。制服姿の隆也がいつの間にか部屋にいた。しかも神聖なる乙女のベッドでくつろいでるってどういうこと?つかノックくらいしろノックくらい。仮にもここは花も恥じらう女子高生の有り難きお部屋だぞ。そう言えば私の顔も見ずに隆也はゲーセンの雑魚キャラをあしらうように鼻で笑った。水虫になればいいのに。
「DVD進んでるぞ」
「隆也が話しかけるからでしょ、バカ也ごふっ」
ベッドに座った彼の足は余裕で私の頭を蹴り飛ばした。
ああ、わり。足が長くて困ってた。
中耳炎になればいいのに。
「隆也、新体操に興味あったっけ(野球馬鹿の癖に)」
「別に」
「今まで私がどんな大会でどんな賞取っても無関心だったのに(野球馬鹿だから)」
「別に」
「あれか、男の憧れレオタードか。高校球児と言えど男だもんね。いくら野球馬鹿でも男だもんねぐふッ」
「はぁ?殴るぞ」
「既に蹴りが入ってますがっ!」
また見たかった技が過ぎていた。頭を押さえながら巻き戻しボタンをポチリ。
色とりどりのリボンとボール、そしてレオタードをまとったスタイル抜群のレディ達が軽やかなリズムに合わせて舞っていた
「それ、なに」
「だからレオタードだよムッツリぶふ、」
「ちげーよ、その手に持ってる紙だよ」
「ああ、これ」
私のレオタードが入ってる袋の横には今年のインターハイの日程表。
「見事なまでにモロかぶりですぜ、旦那」
「うるさい、お前うるさい」
「発言拒否ですか」
「お前30センチくらいに縮めばいいのに」
「存在拒否ですか」
「そうすりゃ鞄にでも入るしさ」
「いれてどうすんだよ。エスパー伊藤とかできませんけど」
「ちげーよお前馬鹿じゃねーの」
「はあ?」
「甲子園、連れてくんだよ」
やられた、思考が止まる
(たっちゃん……)
(やめろ)