文W

□僕の動力源
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「臣。いい加減にしろ」



ご機嫌斜めな郁の声に、僕は首をかしげた。


「え?」


「え?じゃないっ!」


ぴしゃりと言われて、僕は困ってしまって微笑した。


「何の事です?郁」


「イライラするのは止めろ。こっちの気分が悪くなる」


郁の言葉に、僕は眉をひそめた。


「そんなにイライラしていましたか?」


自分ではそんなつもりはなかったのに。


「ああ。先程から時計を見ては、溜息をつき、キーボードを叩いては、窓の外を見て。
 また、溜息をついて、キーボードを叩く。いい加減にしろ。鬱陶しい」


郁の方こそ、イライラと髪をかきあげている。

 僕は内心そんなに感情が外へ出ていたことに驚きつつも、苦笑した。


「すみません。郁」







教室から会計室に行く途中、伊藤君に会って。

 飛び上がらんばかりに嬉しかったけれど、それを隠して何時ものように笑いながら話しかけたら。

 伊藤君は僕に会えてすごく嬉しかったと言ってくれて。

それで僕がどれだけ喜んだかなんて、伊藤君が知るところじゃないのだろうけど。


「伊藤君。会計室に遊びに着ませんか?美味しいお菓子があるのですが」


ここで会ってしまったら、離れるのが惜しくなってしまって。僕は伊藤君を会計室に誘った。

 すると伊藤君は、すまなさそうに微笑んで、


「すみません。今日は・・・」


と言った。

 僕は内心酷くガッカリしつつも、にっこり微笑んで


「先約があるのなら、しょうがありません」


と返した。

 すると、僕の心のうちなど読めるはずもない伊藤君は、


「生徒会の方を手伝う約束なんです」


と笑顔で言った。


「・・・そう、ですか」


「はい」


言葉の前の間になんか気づきもしなくて、伊藤君は無邪気に微笑んだ。


「引き止めてしまって、申し訳ありません」



去っていく伊藤君の後姿を見ながら、僕の心の中は嫉妬の炎が燃え盛っていた。

 僕の心は、君が他の誰かと話しているだけで、ちくちくと痛むのに。
君が僕以外の人といることなど耐えられないのに。

生徒会室には、あの中島がいる。
いろんな感情がまぜこぜになって、僕の心を締め付ける。



「伊藤君・・・」



呟きは空に消えた。
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