novel

□七夕前の出来事
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「うわっ、降ってんのかよ〜」

梅雨真っ只中、昨日テレビで晴れと言われたのに生憎の雨。
季節柄仕方ないが、予報が外れているとかなりへこむ。
今日は、のーとんと外出の予定のつもりで朝早くから起きて準備するつもりだったが、この調子だと暫く止みそうにない。
また家で籠もる1日になりそうだな。

「フフ〜ン♪」

のーとんはというと、鼻歌を歌い椅子に座って何を書くのかテーブルの上で画用紙を数枚並べていた。
出かけるの楽しみにしてたのに、のーとんは相変わらず呑気だよな

「のーとん、何してるんだ?」
「あ、明〜♪コッチきなよー」

俺に気付いたのーとんは手招きし、隣の椅子に座らせる。
良く見ると置かれていた画用紙は横より縦の方が数センチ長い。

「長方形の画用紙なんて何に使うんだよ?」
「え〜、明ってば数年間生きてて知らないのー?七夕だってばさー」

な、何か今の言い方ムカつく…
例の画用紙は短冊なのか。

「七夕ぐらい知ってるつーの!!…で願い叶える生物が何でこんな事すんだよ」
「えっ?のーとん星の皆だって毎年やってるよ?なんたって行事だもーん♪」

そ、そうなのか…つか願いを叶えるのーとん星の奴らがそんな事するなんて不思議だ。

「ふぅん。ま、お前の事だからエロい事書くつもりだろ」
「え、何でわかんのさー」
「マジなのかよ!?」

そりゃ、長い間のーとんと一緒にいるとコイツのする事はわかる。
大きなため息を付くと、のーとんは頬を膨らませブーブーと文句を言ってくる。
ああ、ついて行けね…。

「せっかくだから明も書きなよ!」
「ん?おぅ…」

ペンと短冊を渡されるが、いざ書こうと思うが思い浮かばない。
それに比べてのーとんはすらすらと口には言いにくい願いを書きこんでいる。
流石、エロノート…しかも一枚だけじゃなく次々と。

「呆れるな…」
「むぅ。何か言った?」
「べ、別に…何でもねーって」
「早く書いてよー」

そんな急かさなくてもペンと短冊は逃げないっての!
そして、隣で目をキラキラさせて覗きこむのーとんを殴る

「書きにくいだろ!!そんなに見んな」
「うぅ。もぅっ!書く事が増えたじゃん…明に殴られません様にって」
「アホかっ」
「また殴る〜」
「お前が悪い!」

数分後、やっと落ち着いて短冊に書く事が出来た。
俺の書いた内容…

―のーとんとずっと一緒にいられます様に―

自分で書いて起きながら恥ずかしいが書いた事は嘘偽りのない本当の願い。

「明ぁ〜やっぱり僕の事今も好きなんだねー」
「好きじゃなかったら地球に直ぐにでも戻ってるからな…」
「僕も好きだよ。この先も明と一緒にいたい」

キスをしようとしたのか、顔を近付けてきたが、ふとした事を思い出しのーとんの唇を手で塞ぐ。

「…明?」
「短冊に書いたのは良いけどよ、笹は?」
「笹ぁ?そんなのないよ」
「ハァ!?」

笹もないのに、短冊を何処につける気なんだ。
短冊に願いを書いても笹がなければ意味がない気がするが。

「じゃあさ、笹がない間は家にあるクリスマスツリーで…ゴバァ!!」
「季節違いだろが!ったく」

取り敢えず笹は、雨が降ってない日にのーとんと一緒に取りに行こう。
七夕前に行けると良いけど…な。

END

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