短編

□思慕
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何時の間にか お前の事でいっぱいになっていて

ずっと傍に居たいと 何時からか焦がれてた

その願いさえ 叶うなら俺は

何でもできる そんな気になるんだ

大好きなお前だから 邪魔にならないように

仕事優先でいい そんなお前も好きだから

背中を見ているだけでも 幸せ

俺が一番じゃなくても 少しでも俺の事

想ってくれているなら 幸せ

だから どうか

嫌いにならないで・・・土方。















思慕













自分の気持ちに気付いてから、俺はよく真選組と関わるようになった。

俺の事、嫌ってくれていたっていい。少しでも俺の方を向いて欲しい。

その低くて綺麗な声を、真っ直ぐで汚れのない瞳を、少しでも長く見ていたくて。

万事屋の仕事が入っていない時はなるべく外を、土方が巡回する場所を歩いて。

見付けたら何気ないふりして近付いて、喧嘩したり、時々意気投合したり。

そんな日常が、俺は凄く好きだった。

でも、俺は男。土方も男。

土方には真選組という大切なものがある。

そんな事は俺も重々承知で、だからこれ以上の関係なんて無い事も分かっていたし、諦めていた。

けれど、ある日
「アンタらそんな仲が良いんだしさっさと付き合っちまいなせぇよ、何時までもたらたらたらたら、見てるこっちが苛々するぜィ」
と、沖田君が俺達に言ってきた。

そんな沖田君の発言に、最初は俺も土方も否定したものの、それから色んな奴が俺達を冷やかして来て

俺が何時もの冗談のつもりで(本当は少し、心の何処かで期待しながらも)付き合ってみる?と土方に言ってみた。

馬鹿かお前は、そう言ってまた何時もの様に俺の事を小突いて来るとばかり思っていたのに

「いいぜ、お前の事嫌いじゃねぇ。好きだよ」

土方は気まぐれだったのかもしれないけど、本気じゃなかったのかもしれないけど

俺、その時凄く、凄く、嬉しかったんだぜ。

例え土方の仲で俺が一番じゃなくても、二番目でも三番目でも、土方は俺に好きだと言ってくれた。

それだけで俺は満ち溢れた気持ちになったから。

俺はお前の為に俺が出来る事ならお前の願いを叶えるよ。





俺に幸せをくれたお前に、俺の全てを捧げるよ。

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