短編

□暴君兎の退屈凌ぎ
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「やぁ、約束を果たしに来たよ」

「・・・・いや、早くね?」

ここは人気のない丘の上、気晴らしに夜の散歩と洒落込んでいた銀時の前に突如神威は現れた。

満月を背景に兎は笑う。





 暴君兎の退屈凌ぎ





銀時に、殺しに来るまで死ぬなと言い残し、宇宙へと去って行った神威。
その出来事があってから一ヶ月後、再び銀時の前に神威は牙を剥き出した。

「だって次に行った星の強いって言われてた奴、見かけ倒しで退屈だったんだ」

「で、何、俺を殺しに来たわけか」

銀時は腰の木刀に手をかけ身構える。

「いや、鍛えとけって言ったけど、アンタやりそうにないから暇だし自分で育てる事にした。だから、まだ今は殺さないよ。けど・・」

ガギィィイインッ!!!!

木刀と日傘が勢いよくぶつかり合う。

「勿論、今鍛える」

ケラケラと楽しそうに神威は笑った。
夜王と闘った時と同じような緊張感。僅かな一瞬の隙が命取りとなる。
神威の素早い動きに、銀時は防戦一方となってしまう。だが、怪我や疲労がない分、夜王との闘いの時よりも動きは幾分か良い。

「やっぱり、この前より動きがいいね。でも、アンタの力はまだこんなもんじゃないんだろ?何故その力を秘めるの?何故自分の力を殺すの?伝説の白夜叉がさ」

「何ッ・・・・」

銀時に一瞬隙が生じたのを神威は見逃さなかった。

「あたり、だね」

重い神威の蹴りが銀時の腹に直撃し、数メートル後ろに吹っ飛ばされる。

「がはッ!!」

地面へと思い切り打ち付けられた銀時は、口から血を吐き、白い着流しにその血が付着する。

「気になって阿伏兎に調べて貰ったんだよね、ココの事」

次の攻撃に備え、体制を立て直し身構える銀時の前へと神威は歩いてきて、話を続けた。

「で、アンタが伝説の白夜叉だってわかったわけ。」

「残念だが、もう俺は白夜叉じゃねぇよ」

「なら、白夜叉を引きずり出すまでさ」

再び神威が攻撃を仕掛けようと構えたその時、辺りに銃弾が飛び交った。

「銀ちゃんに手を出すなヨくそ兄貴ィイイイ!!!!」

振り向けば、傘をこちらに向ける神楽と、隣で木刀を構えた新八が立っていた。

「これからなのに」

ちぇっ、と面白くなさそうに神威は渋々銀時から離れた。

「銀さん大丈夫ですか!?」

「銀ちゃん!!」

神楽と新八が銀時の元へと駆け寄る。

「邪魔が入ったから、今日は帰るよ。じゃあ、またね。白夜叉さん」

ケラケラ、笑いながら神威は去っていった。

「案外あっさり帰ってくれましたね・・・・」

「銀ちゃん!くそ兄貴にキズモノにされてないアルか!?」

「神楽ちゃん、台詞にやや語弊があるからね!!」

「ん、あぁ、俺は全然平気だよ。ありがとな、新八、神楽。よし、帰って飯食うぞ〜」

「ご飯アル!!!!」

「じゃあ早く帰りましょう!」

早く早くと、銀時の両腕を二人がぐいぐいと引っ張る。
このまま神威が食い下がるとは考え辛い、また何かしら接触してくるだろう事を考えながら、銀時は新八と神楽に手を引っ張られ帰路を歩いた。
今はまだ、この二人と共に・・・・。






次の日、銀時は自分の寝ている布団に違和感を感じて目を覚ました。
寝起きでぼやける目を擦りながら、違和感の正体を見た。

(アレ・・?いや、アレ?・・・・アレ?)

目の前の光景に銀時は困惑する。
昨日帰ったと思われた神威が、銀時と同じ布団の中でこちらを向きにこにこしていた。

「ギャァァァアアアアア!!!!何でお前がここにいるんだよ!?」

「地球結構気に入ったし、俺もここに住もうかと思って、いいよね?」

神威に逆らったら、何をされるかわからない。
銀時には笑顔で首を縦に振るしか選択肢がなかった。

この後、居間で銀時と一緒に飄々とご飯を食べている我が兄を見た神楽が暴れだし
破壊力抜群の兄弟喧嘩が勃発したのは言うまでも無い。





暴君兎はケラケラ笑う

好物をゆっくりと育て

その果実が熟れるまで

暴君兎はケラケラ笑う

熟れたその果実を

いつかこの手にかけるまで

暴君兎は白銀の傍で

ケラケラ笑う

楽しそうに

退屈凌ぎを何時終わらせるのかは

暴君兎にしかわからない







END

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