短編
□アゲハ蝶
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『なぁ、高杉。お前は一体何処までいくつもりなんだよ。いつになれば、お前の戦いは終わるんだ?』
『馬鹿いってんじゃねぇよ。俺の戦に終わりなんてねぇのさ。自ら終止符を打つことはできるけどなァ』
まぁ、終止符を打つ時は俺が幕府を潰すか、俺が朽ち果てる時だ、と高杉は付け足した。
「そう・・・・じゃぁ、気をつけてな・・・・・・」
そうして高杉が野望のために終戦後、旅立ったのを見送ったのはもうずっと昔の事だ。
アゲハ蝶
それから、高杉と会うことはなかった。
思えば、銀時を支えてくれていたのはいつも高杉だった。
松下村塾に通っていた時から、喧嘩等はしつつもいつも傍にいてくれて、攘夷戦争でもよく一緒だった。
お互いの傷を舐め合うように身体を重ねた事だってある。
あの頃は高杉と離れるなんて考えてもいなかった。
本当は、高杉に着いていきたかったけれど、殺しに迷いがある銀時では高杉の足手まといになるだけなのはわかりきったことだったから、銀時は高杉とは別の道を歩む事を決めたのだ。
(あいつは今、どうしてんだろう)
攘夷浪士としてまだ戦っているのだろうか。
夢で時々、高杉に出会う。正確に言えば昔の高杉に。
会いたい、と銀時は思う。高杉に会いたい。けれど会えない。
会ってしまったら、高杉にまた愛されたいと願ってしまう。
高杉にとってあの頃は一時の快楽のためであったのだとしても。
嗚呼、駄目だ。やはり会ってはならない。
この感情は、許されるものなんかじゃない。
いつの間にか外では雨が降っていた。