短い話

□眼に潜む
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それは置いて行かれたイヅルや檜左木を誘っての酒宴の席だった。
「俺、お前はもっと落ち込んでると思ってたけどよ、意外と平気そうだよな。」
酒宴が進みすっかり出来上がった阿散井に話しかけられ、イヅルは笑顔をみせた。
「そうだね・・・うん、平気だよ。だって市丸隊長はいつもここにいるもの。」
眼を閉じ、大切そうに髪に隠れた眼に触れる。
「そうだよな!俺もこうして眼を閉じると今でも隊長の姿が眼に浮かぶぜ!」
二人の会話を聞きつけた檜左木が割り込み、泣き出した。
「先輩・・・飲んで下さい!」
貰い泣きした阿散井が涙を拭い酒を注ぐと檜左木は一気に飲み干す。
「良い飲みっぷりね〜修平!今日はとことん飲むわよ〜!」
しんみりしかけた宴席は再び盛り上がった。
「・・・そういう意味じゃないんだけど。」
小さく呟いたイヅルの声は誰にも届かなかった。

「北と東からの連絡が途絶えました!」
「・・・生体反応がありません。全滅です。」
総攻撃を仕掛けるべく準備を始めた矢先、突然の奇襲だった。
作戦を見越した様に隙をつき、戦力を知っているかの様に相性の悪い相手とぶつかる。
「ダメです。こちらの出口は塞がれました。」
「くっそう!なんでだ!まるでこっちの動きが筒抜けじゃねえか!」
最後に生き残った戦力を集めるがすっかり囲まれ追いつめられた。
「ご苦労さんやったね。迎えにきたよ、イヅル。」
「市丸?!どういうことだ!吉良!」
見知った声の告げた内容に驚愕する周囲に構わず、嬉しそうにイヅルが駆け寄る。
「良い働きだったよ、吉良君。君の情報は実に有益だった。」
「ばかな!吉良への監視は付けていた。連絡などする方法は無かった筈だ。」
イヅルには裏廷の他に12番隊からも監視が付いていた。
「連絡なんて必要無いよ。ボクにはイヅルの見えるもんは全部解るんや。」
にこりと笑いギンは愛しそうに左目に触れた。
「貴方達は・・・眼を入れ替えたのですね!」
「アタリ。さすが4番さんや。でもちょおっと遅かったな。」
愕然とするかつての同僚達にイヅルも髪に隠れた左目に手を当て微笑んだ。
「だから云ったでしょう。市丸隊長はここにいるって。」

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