04/17の日記

21:40
大奥
---------------
「おや?見掛けん顔やね。新入りか?」
殿上初日、初めてすれ違った市丸に膝を折り頭を下げて通り過ぎるのを待っていた際。
頭の上からかけられた声に顔を上げた。
「はい。本日より姫様付きの部屋子を勤めさせて頂いております。」
「ふーん、綺麗な色やねぇ・・・名前は?」
ついと伸ばした手で顔に掛かる髪をさらりと梳き、全てがこぼれ落ちる手前で一房を掴み、唇を寄せた瞬間。
薄く開いた市丸の瞳と眼が合いイヅルはびくりと身体を震わせた。
「イ、イヅルと申します。」
震える声でイヅルは告げ、見透かす様な瞳から逃れるように眼を伏せ視線を逸らした。
「イヅルか。ええ名前やね、ほな後程ゆるりと話そ。」
にこりと笑い立ち去る市丸にイヅルは小さく息を飲むと、深く頭を下げた。

ここ大奥で立ち入りを許された男性はただ一人。
そして女に名を尋ねるのは、その夜の伽を命じる合図なのでごさいます。
これが後のご寵愛の側室『綺羅の方』との初めての出会いでごさいました。

前へ|次へ

日記を書き直す
この日記を削除

[戻る]



©フォレストページ